仙豆とは?
「…もう、どんくれぇ眠ってんだ?」
なるべく刺激を与えないよう、小声で話し始める。
「もう数週間ずっと眠り続けている。でも仙豆、与える事出来ない。神さま、危険だとやめた」
仙豆とは、ソラ豆くらいの大きさで、一粒食べるだけで約10日程は飢えを凌げる優れものだ。また、飢えだけでなく傷付いた身体も回復することが出来る。
仙猫カリンによって栽培されており、一度の収穫でごく僅かしか採れない為、大変貴重とされている。
「えっ!?何で仙豆がダメなんだ?喉につっかえちまうからか?」
万人に効果があるとされる仙豆。それさえも役に立たないとなると、不安もかなり大きくなるだろう。
「それだけじゃない。きっと神さま、副作用を心配している」
「…フクサヨウって何だ?」
「治療目的以外に出る悪い症状、それが副作用。場合によっては死に至る事もある」
「いっ!?死んじまうんか!?で、でもよ…仙豆にそんなもんあんのか?仙人のご馳走なんだろ?」
「分からない。人それぞれ、稀に副作用を引き起こす者もいるかもしれない。リファの場合、生態分からない。用心するに越した事はない」
「…そっか…確かに言われてみっとそうだよな…仙豆は食い過ぎっと、えれぇ事になっちまうしなぁ……」
時は、彼が幼少の頃にまで遡る。
カリン塔には、仙人のご馳走があるというおいしい話にまんまと釣られたヤジロベーの話である。
彼は悟空を背中に担ぎながら、天にまで届く程に高いカリン塔へ登ってきた。
言うまでもなく、それは仙人のご馳走の為である。
だが、いざそのご馳走の正体を知ってしまった彼は酷く落胆してしまった。
まさかそのご馳走が、ただの豆粒だとは思わなかったらしい。ここまでツライ思いをして登って来た分、ショックも相当のものだった。
ヤケクソになったヤジロベーは、カリンから仙豆の入った壺を取り上げ、大量の仙豆を掴み取り、口いっぱいになるまで食べ続けてしまった。
先程も言った通り、仙豆は一粒食べるだけで10日程は飢えを凌げる。そのようなものを大量に胃の中に入れてしまえばどうなるだろうか。
ヤジロベーの腹は今にも破裂しそうになっている風船のように膨れ上がり、かなり苦しい思いをしたのだ。
ある意味、それも副作用の一つなのではないかと、悟空は苦笑を浮かべた。そこで改めて感じたという。
何にでも限度がある。それを超えてしまうと、何らかの代償が必要になってくるのだろう、と。
「仙猫カリンから、孫悟空なら何とか出来るかもしれないと聞いた。出来そうか?」
「…ああ、やってみなきゃ分かんねぇけど、可能性はある。ミスター・ポポ、今からこいつにオラの気を送ってみっから見ててくれ」
彼の気を送るという方法は一度下界で行い、検証済みだ。これなら、仙豆を食べさせるよりは問題ないだろう。
ミスター・ポポに相槌を打つと、悟空はリファの手を自身の手で包み込み、スーッと目を閉じた。
ーーブウゥゥゥン・・・
彼の身体から力強い気が放出され、それは徐々にリファの身体へと送られていく。
「……………」
その行為を、ミスター・ポポは手を顔の前で組みながら、不安そうに見守っている。
本当に大丈夫なのだろうかとーー。
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