ヤジロベー登場
茶色の和服を着た、長髪で小太りなこの男の名はヤジロベー。
彼も悟空が幼い頃に出会い、 一度対峙した間柄ではあるが、今ではすっかりと慣れ親しんでいる様子。
現在はカリン塔に住み着き、カリンや地球の神の使いのような役目を担っているそうだ。
「ヤジロベー、どこへ行っておった?せっかく面白いものが見られたというのに……」
「便所だ便所!で、その面白えもんってのは何なんだ?」
「ほっほっほ!今回悟空が此処へやって来た理由、おぬしには分かるか?」
「へ…さあ?また強ぇヤツでも現れただか?」
服を整えながら、ヤジロベーはそれと言って興味無さげに問うた。
「いや、違う。地球にやって来た一人の娘の為じゃ」
「へえ…そうか、娘のため……」
「うええーーっ!?む、むむむ娘の為ぇえ!?」
衝撃的な事実を聞かされ、思わず後ろへ倒れそうになった。
「あ…あああ……あの孫が一人の女の為に…信じられねえだに……」
変わり者の悟空にも、少しは人間らしい所があったという事実に対し、かなり驚いている様子。
今まで踏ん張っていた身体もとうとう耐えきれず、そのままドスンと尻餅をついてしまった。
「…じゃが、あやつがあそこまで必死になるという事は、よほどの娘なのじゃろうな……」
「もしかして、どえりゃあべっぴんだったり、とか?いや…だけんどよぉ、孫はそったら事に興味なんてねーでしょー?」
「わしも会った事がないから分からん。下界の様子ならカリン塔から分かるはずなんじゃがのう……」
塔内にある壺のフタを開けるなり、その中を覗き込む。
壺の中身は水である。だが、ただの水ではない。しばらくすると、水面にカリン自身の姿ではない別のものが映しだされた。
それは、悟空の息子である悟飯が母親のチチと本屋で参考書を選んでいる様子や、海辺の別荘でサングラスをかけた白ひげの老人が綺麗な女性にこっ酷く叱られている様子など、その他にもたくさんの様子が浮かび上がった。
どうやらその壺は、下界の様子を映し出す力があるようだ。
ガーリックJr.が下界へ降り立った時も、このように下界を眺めていた。 だが、リファの姿だけは映し出されなかった。
その為、カリンは地球の神が彼女を連れて天界へ帰って来るまで、詳しい事が分からなかったのである。
何とも摩訶不思議な事態に、カリンも気になっている様子。悟空が必死になるのも分からなくはなかった。
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