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上司の罠





「…あったたたた…なんで…?何で出られないの?」




強打した顔面を押さえながら、のっそりと起き上がり、出られる筈の方向をじっと見つめるリファ。




再びその方向へ手を伸ばし、本当に抜け出せないのかどうか確かめる。








ーぷにゅッ! ぷにゅッ!





「……………」




やはり、その方向には見えない壁のような何かが彼女の行く手を阻んでいる。




触れたところから水の波紋のようなものが中心から外側へと広がる。手触りは、例えてみるとスライムのよう。




そう、彼女の上司はこの部屋を出る時に密かに結界を張り巡らせていたのだ。




しだいに、リファの手がプルプルと震え始める。




「…まさか、仕事が全部終わるまで此処で暮らせって事…?」




辺りを見回しても、視界に入るのは書類や、難しそうな本ばかり。




とても生活に適しているとは思えないこの場所で、本当に過ごさなければならないのだろうか。




「…あの人は一体何をお考えなのでしょう…新手のイジメですかコレは…」




ふと彼女の頭上に、ニヤニヤと憎たらしく笑っている上司の姿が浮かぶ。




ブンブンと咄嗟に両手を激しく振り、彼の姿を煙を払うように消し去った。




だが、このままの状態でいても状況が変わるわけではない。




リファは溜め息をつきながらも、仕方なくデスクがある場所へ戻る事にした。




「…あははー…まずはこの散らかった書類から整理してかなきゃならないのね…」




悲惨な状態と化したこの風景を再び眺め、思わず苦笑を浮かべる。




まずは片付けから始めなければならないなど、気の遠くなる話である。




だがやるしかない。




リファは腕を捲り上げ、書類の山へと再び潜っていった。







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