短編集 その@
猫 (海堂薫)

小さな鳴き声が聞こえた。
それはか細く、如何にも消え入りそうな声だった。

「…………」

聞こえる方に行くと、茂みの中にある、ボロボロになった段ボールの中に、仔猫が一匹。

「みゃ〜…」

「ひでぇ事しやがる…」

「みゃ〜…」

早く病院に連れて行かないと、このままじゃ、死んでしまう。

すると、

ガサガサガサ。

茂みが揺れる。

そして、

「コッコ〜!コッコ〜!」

コッコ、と云う名前の何かを、呼ぶ声が聴こえる。

「…」

ガサガサガサ、

「みゃあん」

一匹の仔猫が、茂みの中から姿を見せるが、再び、ガサリ、と、茂みの中に姿を消す。

「まあ、コッコ!!いけませんよ。黙って出掛けては…え?捨て猫…?」

あの仔猫は、人間と話が出来るのか?

そんな事をふ、と思う。

ガサリ、と、茂みが揺れる。

「…お前は」

「まあ…確か、海堂さん、でしたか」

「桜井妹、か」


先程、姿を消した仔猫を、腕に抱いていた。

「…その仔は…」

「捨て猫だ」

「何と云う酷い事を…!」

奏荼は、ポーチから、ハンドタオルを取り出すと、震えている仔猫を抱き上げる。

「もう大丈夫ですよ。これから病院に参りましょう」

「ふーっ」

「コッコ。貴女の妹か弟になるのですよ。威嚇はいけません」

どうやら、この捨て猫を飼う気でいる様だ。

「飼えるのか?」

「はい。見捨ててはおけません」

「…そうか。良かったな」

「みゃ〜…」

仔猫は、一瞬、嬉しそうに笑った。

「それでは…」

奏荼は、にこり、と笑うと、踵を翻し、スタスタ、と歩く。

「続き…するか…」

タッ、と再び走り出す。

仔猫の嬉しそうな鳴き声に満足しながら―――…。



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あとがき

長くなった…(--;)
さーせんm(__)m

〜オマケ〜

数日後の部室。

「よぅ、マムシ」

「何だテメェ、やんのか!!コラ

「桜井姉から、写メ来てっぞ」

どうやら、海堂のメアドを知らない奏荼は、悠香に頼み、桃城にメールを送ったようだ。
そのメールには、あの日の仔猫の、元気な姿が写っていた。

「雄で、名前が"カル"だと」

「…………」

「海堂先輩…スミにおけないっス」

「…フシュウ…」


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あきゅろす。
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