短編集 その@
背の高さ (千歳千里)
小柄で、華奢。
肌も白く、物腰も柔らかい。

『氷帝の白雪姫』なんて云う"アダ名"が付いているなんて知らない君。

高い物を取ろうと懸命に背伸び。

それを見て、くすり、と、笑っていた。

「う〜…」

頭上にある物を、恨めしそうに見つめている。

それを見つめているのも楽しい。

けれど、そろそろ、助けないと、美味しいトコロを持っていかれてしまうだろう。

「桜井」
「あ、千歳さん」
「これで良かと?」

ひょい、と、簡単に取ってしまう。

「はい。これです」
「ん」

奏荼の望む物を手渡す。

じぃ、と、見つめて来る視線を感じて、千里は小首を傾げた。

「どげんしたと?」
「いえただ…羨ましいな、と、思いまして…」
「羨ましい?」

奏荼が云いたい事がなんなく、判った。

奏荼は常に、牛乳を飲んでいる。

そして、身長を測っては、落胆している。

どうやら、身長を伸ばそう、と、必死になっている様だ。

「桜井は小さい方が良か」
「え?」

きょとん、と、した表情で見つめてくる。

「………」

カランコロン、と、下駄を鳴らして歩き出す。

それを追う様に歩き出す。

ゆっくりと、静かな時間が流れる。

さわさわ、と、風が、木の葉を揺らす。

「高い物を取る時、オイに、云えば良かとよ。取るから」
「ありがとうございます」

にこり、と、笑う。

しかし、その笑みが偽物、である事に気付いていた。

いつか、本物の笑顔を見る。
それまでは、この友達関係である事を願う――――…。




------------------------------
あとがき

熊本弁、あんまり知らない(ToT)

間違えだらけでスイマセンm(__)m

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!