短編集 その@
渡さない (長曽我部元親)

「うみぃ」

波打ち際に駆けて行く。

波が打ち寄せては帰る、それを、不思議そうにに見つめている。

「どうした?雪」

「チカしゃん。どちて、アレは行ったり来たりちてるにょ?」

難しい質問だ。

「さあなぁ…。俺にも判んねえ」

「ふぅん…チカしゃんにも、判んにゃい事、あるんだねぇ」

「そうだぜ。俺にだって、判らねぇ事はある」

ポンポン、と、雪の頭を撫でる。

「へへっ、ちょっか」

頭を撫でられるのは、キライじゃないのか、嬉しそうに笑う。

余程、独眼竜に可愛がられてんだな。

けど、奥州なんざに、帰す心算はねぇぜ。

海賊は奪い取るのがシゴト、なんでな。

心の中で呟く。

「チカしゃ〜ん

表情をしかめて、元親の側に来る。

「しかめっ面して、どうした?」

「うみ、水、ちょっぱっ

「ハハハハハ、海の水はしょっぱいか」

「ちょっぱ〜

海水を掬って飲んだらしい。

顔をしかめて、海を睨んでいた。

「――――雪!!」

「あ!!まーしゃんら」

政宗の呼ぶ声に反応する。

政宗の所に駆けて行こうとした瞬間、雪の腕を掴む。

「チカしゃん?」

きょとん、とした表情で、元親を見つめる。

「何の真似だ?」

「コイツは渡さねぇ」

「HA!!笑えねぇJokeだ」

バチバチバチ、と火花が飛び散る。

渡したくない。

たった"1人の男"として見てくれる、唯一の女だから。

雪は、誰にも渡さない。


俺だけのモノだ――――。




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あとがき

元親→雪←政宗です。

雪は、誰を思っているのか、不明。

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あきゅろす。
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