番外編
羞恥心です
激しく求められた長い夜が明け、朝を迎えた。
カーテンの隙間から差し込む光に、国光は少しだけ眉を寄せ、瞼を押し開ける。
隣に寝ていた筈の奏荼の姿はなかった。
不思議に思った国光は、サイドテーブルに置いてあった服に着替えると、リビングに向かう。
すると、キッチンで機嫌良さそうに朝食を作っているようだ。

「あ、おはよ」
「あぁ、おはよう」

国光がリビングに姿を見せた。
ぱちり、と、視線が絡む。

[昨日……ハチミツくんの隠された一面を見せられて……、やっぱり、男のコなんだなぁって、実感……]

上着に隠された、無駄な脂肪もなく、しなやかな筋肉質の胸板。
あの指先が、あの唇が身体に触れた時に、感じた感触。
それらが思い出された瞬間、ボンッ、と顔が赤く火照る。

[わわわっ!!昨日の事が……っ]

赤く火照る頬を掌で押さえて、国光からの視線を避ける。

「奏荼……。後悔しているのか……?」
「違っ!!そっ、その……今になって、あの、っ!!はっ、恥ずかしいのっ!!」
「………そ、そうか」

情交の最中なら、与えられる快楽に思考が奪われ、あられもない姿を見られても多少は平気なのだろうが、理性が正常に働いている今、羞恥心が奏荼を襲っていた。
気まずい空間が、二人を包む。

「と、とりあえず、食事にしよう」
「ふぇ……あっ、う、うん。そうだね、すぐに準備するね」

パタパタ、とキッチンに駆け込む奏荼に、国光は小さく笑った。

[赤くなったり、困惑したり……彼奴はねこみたいだな]

かちゃかちゃ、と、食事の準備の音を聞きながら、国光は時計を見る。
時計は、9時半を指している。




残された時間は、後僅かーーーー……。




俺以外の男に振り向かないように、"俺"を奏荼に刻むーーーー……。



がたり、と椅子に座った国光はそう考えていた。





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あきゅろす。
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