番外編
長い夜
奏荼と夕食を食べ終えた国光は、風呂に入り、用意された客間に居た。

奏荼と二人きりで過ごす事が出来る、最期の夜。
何を話せば良いのか、判らなかった。
別れ話をしなくてはいけないのに、言葉が出てこない。

「………」

沈黙が重い。
すると、ドアをノックする音が聞こえる。

「ハチミツくん、起きてる?」

ドア越しに聞こえる不安げな声。

「……起きているが……」
「ちょっと、良い……?」
「………」

国光は立ち上がると、ドアを開ける。
そこには、微かに頬を赤く染めた、奏荼が居た。

「……入っても良い?」
「え、あ……あぁ」
「お邪魔します」

奏荼は、ゆっくりとした動作で、ベッドに腰を下ろした。
そして、その横に腰を下ろす。

「………」

何を話せば良いのか、判らない二人。
かちこち、かちこち、と、時計の音だけが響く。

「ハチミツくん……」
「……何だ?」
「ボク………待ってるから」
「奏荼……?」

国光の胸に飛び込む形で抱き付く。

「ハチミツくんが、プロになって、その……ボクの事、迎えに来てくれるの、待ってるから」
「何時になるのか判らない。それでも、俺を待っていると……?」
「うん……」

きゅう、と抱き付いてくる奏荼の背中を優しく抱き締める。

「好きだよ、ハチミツくん。離れていても、ボクの想いは変わらない。ボクのココロは、何時もキミと一緒だから」
「ーーーーー俺もだ」

す……と、奏荼の身体を離す。
赤らむ頬に、潤んだ瞳が、国光を見つめる。
窓から覗く月明かりが二人を包む。
ふ、と、二人の影が重なった瞬間だった。

ちゅっ…、と、小さく響くリップ音。

「ふ……ぅんっ……んっ」

ちゅ、ちゅっ、と何度も重なっては離れる唇。
程好く甘く感じる唇をもっと、もっと、味わいたくて。
腕の中で、微かに震える奏荼が愛しくて。
するり、と隙間から入り込んだ舌が、逃げ惑うそれに絡み付く。

「ふっ!!ぅんっ……」

くちゅ、じゅく……と、甘く響く水音が、奏荼の羞恥心を煽っていく。
とさ、と、奏荼の身体がベッドに押し倒される。
国光からのキスが終わりを告げ、つ……と、銀色の糸が二人を繋ぐ。

「もう止められない……」
「………うん……構わないよ。止めなくて良いから……」

かぁあっ、と、頬を赤らめて言う奏荼の上から、笑った気配がした。

「もう知らな……あッ!!」

ふにっ、と、パジャマの上から胸に触れる感触に、上擦った声をあげる。

「……ふぅ、んっあ……っ」
「……」

奏荼の甘い声が、理性を一掻き、一掻き、崩していくのが、判った。




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あきゅろす。
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