短編集 そのA
ティータイム (丸井+柳+切原)
テニス部合同合宿、強制参加の奏荼は、キッチンに立て籠っていた。

「🎵」

やけに上機嫌。
それもその筈。
景吾と国光に、

「今すぐボクにお菓子を作らせないと、監禁されてるって2番目の兄上に訴えてやる」

と、脅迫めいた言葉を並べ、キッチンを使用できる様にしろ、と訴えたのだ。
奏荼の2番目の兄上こと、雪斗は妹至上主義者で、周囲が砂を吐けるほど、奏荼を溺愛しているのだ。
奏荼が嘘を吐き、雪斗にあることないことを告げれば、大変な事態を産み出してしまう。
それを簡単に想像できた景吾は、二つ返事でキッチンを利用できるように手配したのだ。

「今日のおやつは、ドーナツ🎵オールドチョコに、カスタード🎵」

パチパチ、と揚げる音と共に、奏荼の作詞作曲したドーナツの歌が披露されている。

「しかし、このドーナツの穴から覗く景色は、どんなのーーーー………!」
「あ……!」

ムシャムシャ、と、奏荼が作ったドーナツを両手に抱え、貪る赤が見える。
視線が絡まり、時が止まる。

ごっくん

ドーナツを飲み込む音が聞こえた気がした。

「ボクのドーナツ!!!」
「旨ぇな。もぐもぐ、お菓子作りが、もぐもぐ、趣味なのか?」
「喋るか食べるか、どちらか一つにしたまえよ」
「まだ食い足りねぇな」
「…………メダカくんにあげる筈だったのに」
「メダカ?」

キョトン、とした眼差しで奏荼を見つめる赤。

「あれ?丸井センパイ?」
「よぅ赤ーーー「メダカくんっ!!」は?」

キッチンに現れた赤也を見た、二人は同時に声を発するものの、奏荼の「メダカくん」発言に、丸井は、交互に二人を見る。

「彼はキミの知り合いかい?」
「おれのセンパイッス」
「はっΣ(゜Д゜)………まだ食う気か!!それはメダカくんのだったら!!!」
「少しぐらい良いだろぃ!!」
「良かないっ!!」

奏荼は慌てて、ドーナツが乗っているバスケットを取り上げる。

「丸井は甘い物に目がないからな」
「柳……!!」
「睡蓮くん!!」
「柳センパイまで!!」
「赤也が浮かれ気分でココに入っていくのを見かけてな。いいデータが取れる」
「「………(--;)」」

データ収集が好きな蓮二は、些細な事でも収集してしまう。
このような事柄が、テニスに必要なのか?と思う二人だが、それを云ってしまえば、どうなるのか、簡単に判ってしまう辺り、もう何も云うまい、と決意する。

「睡蓮くん、和菓子は好きかい?」
「あぁ。嫌いではないな」
「丁度良かった。どら焼きも作ってみたのだよ。後でハチミツくんの所に行こうかと思っていたのだが、キミに決めた。味みて(*^^*)」

和気藹々と話している二人を見て、

「睡蓮、と呼ばれても動じねぇな(^-^;」
「俺なんか、メダカッスよ」

ぶつぶつ云い合う二人に、

「ちょっと早いが、ティータイムにしようか。良いほうじ茶があるのだよ(^-^)」
「ほうじ茶とドーナツかよ!!」
「そうだな。俺は構わない」
「何でも良いッス」

奏荼はにこやかに、お茶の準備を始めた。
息抜き、の為のティータイム。
こうやって、お菓子とお茶を用意されるのも良いかも知れない。
この時間がゆっくりと進めば良い。
密かに思う、4人であった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

奏荼のストレス発散法、がお菓子作り。

2017.03.20

[*前へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!