短編集 そのA
カウントダウン (エース)
「メールー、行ーくーぞー」
『……もうちょっと』
「………(--;)」
シャナメルは、本を読むのを止めない。
エースは、壁に凭れて、シャナメルを見ている。
きりが良い所まで読みたいんだろうけど、待っている方は堪らない。
『ん〜……塩味じゃなくて、コンソメじゃダメなのかな……』
「メシのレパートリーを増やしたいのか……」
レシピをノートに纏めながら、お塩、お砂糖……と呟いているシャナメルを見て、表情がニヤける。
しかし、ここで甘い顔をする訳にはいかない。
早く行きたいエースは、思案の表情を浮かべる。
数分後。
まだ、シャナメルは本に意識を向けている。
「5数える内に終わらせないと、だっこなし」
『( ̄□ ̄;)!!』
「5!!!」
バタバタバタバタ………。
シャナメルは、尋常ではないスピードで片付け始める。
「4!!」
『………ッ!!』
むぎゅ。
全てを片付け終えたシャナメルは、エースに抱き付く。
『だっこなし、やだ(;_;)』
「………そんなにだっこなしが嫌なのかよ(--;)」
以前、エースに「だっこなし」を宣言され、実際、一週間もの間、宣言通り、だっこはしてもらえなかった。
その期間が、とてつもなく辛かったようだ。
それ以来、なるべくすぐに行けるようにするのだが、今回に限っては、レパートリーを増やしたい、と云う願望に勝てなかったようだ。
エースは、しがみつくシャナメルの腰をちゃっかり抱きながら、
[だっこなしは、効果覿面だな。じゃあ、一緒に寝るのはなし………嫌々、それはおれが辛いから、だっこなし、で決定だな]
そんな事を考えていた。
『だっこなし、じゃないよね?』
「ん?」
『だっこ、してくれるよね?』
「間に合ったから、だっこはしてやるよ。これから、5数える間に、おれの所に来なかったら、だっこなしだからな」
『( ̄□ ̄;)!!』
シャナメルは飛び上がるように驚くと、むぎゅう、とエースにしがみつく力が強くなる。
[そ、そんなにだっこ好きなのか……(--;)]
シャナメルは、エースにして貰えるだっこが好きなだけで、他の人にされるだっこは嫌だ、と云う事に気が付いてはいないエース。
それを書庫のドア越しに見ていたマルコとアトモスは、
[早く出掛けてくれェ]
そう思っていたのは云うまでもない。
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あとがき
エースの体温と匂いがないと嫌がります。
エースが大好きなシャナメルでした。
2017.03.04
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