朝の星空
トマドイ



『要らないわ。だってーーーーー………』




ヒューマンショップで、聞いた育ての親の言葉。





『……あたしの子じゃないもの』





そうだよ。
実の親は、産まれたばかりのボクを棄てた。
そう、お義母さんが云っていた。
厄介な子供なんだ、欲しくて出来た子供じゃない、要らない子供だと。
当たり前だ。
ふらり、と、やって来た海賊達に目を付けられた母親は、その日に拉致られ、輪姦された。
全裸で逃げて来た母親は、部屋に引き籠もる。
だから、気付くのが遅かった。
妊娠、してしまった事に。
中絶は出来ない。
父親は、母親を拐い、凌辱した海賊の中の誰か。
だからーーーーーー………ボクを産んで、すぐに棄てた。
まるで、ゴミを捨てるように。
簡単に。




『ーーーー………父親?判る筈ないでしょ。だって、妹は海賊に輪姦されて、妊娠しちゃったんだから』
『ーー…二束三文でも良いから買い取ってよ。要らないから』




誰も、必要とはしない。




「ーーーー……い」

誰かの声がする。
誰?

暗い闇の中。
遠く聞こえた声に導かれる様に、ゆっくりと瞼を開ければ。
視界に拡がるのは、見知らぬ天井。
目だけを動かせば、あの時、襲撃を仕掛けてきた男の姿。

「よォ」
「………誰?」
「トラファルガー・ロー」
「………………ふぅん」

素っ気ない返事。

「お前は?」
「………???」
「名前」
「No.13」
「………それは名前じゃねェよ」
「???」
「ねェのかよ………」

忌々しい様に舌打ちをすると、"トラファルガー・ロー"と名乗った彼は、何かを考えている。
沈黙が重い。

「ルーヴェル・シャルロット」
「???」
「お前は、ルーヴェル・シャルロット。これからそう名乗れ」
「ルーヴェル・シャルロット………」

ローは、シャルロットの髪を一筋掬うと、軽く口唇を寄せる。
その行為に、ドキリ、と、胸が鳴る。

「プラチナ、か。しかも、世にも珍しいブループラチナ」
「!!!」

するり、と、しなやかな指から溢れ落ちる髪が、キラキラ、と、光を放つ。
彼が、遠ざかる。

ーーーーー……殺されるのだろう。

直感的にそう思った。
世にも珍しいブループラチナ。
この髪を奪い、売り飛ばし、ボクを殺せば………。
いや、幽閉と云う可能性もある。
長く伸びた髪を切り、また、髪が伸びる頃に切って、売り飛ばせば、かなりの金になるだろう。
死ぬまでずっと、幽閉される。
などと考えていたら、ぼふっ、と、頭に何かが被せられる。

「何……?」
「それでブループラチナは隠せ。髪を染めれば、折角の髪が傷む」
「???」

彼の考えが判らない。
すると、痛いぐらい顎を捕まれ、上を向けさせられる。

「云った筈だ。お前は俺のモノ。俺だけの、な」

ニヤリ、と笑う彼の妖艶さに、何も云えない。

「俺だけの為に居て、俺だけの為に死ぬ。シャルロット。お前に拒否権はねェよ」
「…………必要としてくれるの………?」

誰も要らない、と、云ったボクを?

ーーーーー……ダメ。

信用しちゃダメ。

戸惑いを隠せない。






それが、彼との出逢い。




[*前へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!