番外編
001
『エースくん、エースくん。朝だよ、起きて』

シャナメルの柔らかい声音に、ゆっくりと瞼を開ける。
シャッ、とカーテンを開ければ、眩しい程の太陽の光がエースを襲う。

「朝……?」
『そうだよ。朝だよ、あーさ。ん、もぅ、寝惚けてる。ほら、顔洗って。ご飯の準備出来てるから』
「……メル、おはようのキス」
『………仕方ないなァ』

シャナメルは苦笑いを浮かべて、ちゅ、と触れるだけのキスを落とす。

「………ん」
『朝ごはん、無くなっても知らないからね』

眠たさが抜けないままに洗面所に向かい、顔を洗う。
そうして、食堂に向かうと、やはり普段と同じ、"第一次朝食戦争"が勃発。
あちらこちらで、水、お代わり、だの食欲を満たす為の怒声が飛び交っていた。

『何時もながら、凄い食欲………』

普段少食なシャナメルは、毎朝、溜息を洩らすものの、残さず食べてくれるので、料理人冥利に尽きるのだが、パンの奪い合いに巻き込まれそうになるのは勘弁して欲しいのが本音。

「マルコ。今日は機嫌が良いな」
「あァ。シャナに頼んでクロワッサンを作って貰ったんだよぃ」

どうやら、シャナメルに「クロワッサンが食いてェよぃ」と頼んだらしい。

『エースくん、寝ちゃダメだよ』
「クカー………」
「「「エースの分まで食うぞ!!!」」」
「「「「「オー!!!」」」」」
『ダメだったらッ!!!』

クロワッサンが入ったバスケットを慌てて取り上げる。
そして幾つかクロワッサンを取ると、残ったクロワッサンを食卓に置く。

『これだけあったら良いでしょ』

クロワッサンを手に、厨房に籠ってしまった。

「ったく……メルはエースにゃ甘い」
「メルはおれの彼女だから」
「起きたのかよぃ」
「マルコも女作れば?」

その言葉に、ゴイン、と、心地好い音が響く。

「痛ってェ!!!」
「煩ェよぃ」
『今の音何?!』

厨房から慌てて顔を出すシャナメルに、

「メールー、マルコが殴ったァ」
「余計な一言を云うからだよぃ」
『もぅ…』

ふぅ、と小さく溜息を吐くと、コトン、とクロワッサンサンドが乗った皿が置かれる。

「メールー」
『はいはい。よしよし』
「「「「「イチャつくなよ(ぃ)」」」」」

拳骨が落ちた場所を優しく撫でるシャナメルに対し、回りの隊長達は突っ込む。

『イチャついてなんか……うっ!!』

バタバタバタ……、と、口元を押さえて、慌てて厨房に入っていく。

「「「「「「???」」」」」」

シャナメルの異変に小首を傾げる。

「体調が悪いのか?」
「聞いてねェ」
「そう云えば、この頃良く食うよな」
「この間なんか、肉をひたすら食ってた」

等と思っている事を告げていく。
心配そうに見つめる隊長達。

『………はぁ……』

口を拭いながらも、食堂に姿を見せるシャナメル。

「体調が悪いなら休んでろ」
『……うん…。でも』
「後で船医に診て貰え」
『……うん』

シャナメルは、エースの横に座ると、自分用に用意したフルーツを口にした。







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