まぼろばの蒼月
010
エースが隠れ家に辿り着いてから数日経過したが、シャナメルが目覚める事はなかった。
すうすう、と、規律良い寝息を洩らしながら、眠り続ける。
まるで、昔語りに出てくる娘の様に。
そんなある日、エースは、一つの夢を見た。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『♪』
「ん……メル?」
『起きた(*^^*)おはよ』

ちゅ、と、バードキスをエースに送りながら、ニコニコ、と笑うシャナメルに、エースはむくり、と、起き上がる。

「なぁ、さっきの唄……なんだ?」
『ん?目覚めの唄だよ。おとしゃんから教えてもらったんだ(*^^*)』
「へェ……。目覚めの唄、か」
『うん。なかなか起きない人に歌うんだって』
「だから、おれに歌ったって訳か」
『だってェ……。エースくんってば、起きてくれないんだもん。…効果あるとは思ってなかったけどね……。エースくん、散歩に行こ?』

嬉しそうに笑うシャナメルに、エースは柔らかい笑みを浮かべた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ん……?」

ゆっくりと、エースが覚醒する。
横に目をやれば、すうすう、と、眠るシャナメル。

「夢、か……」

夢の中で聞いた、目覚めの唄。
確か、シャナメルから教えて貰ったような……。

「………♪」

頭を優しく撫でながら、エースはシャナメルに向かい、歌う。
目覚めるかどうか判らない。
けれど、やってみるしかない。
どうか、目覚めて欲しい。
そう願いながら、歌う。

「……目覚める訳ねェ……ん?」
『…ぅん……んん』

ふるり、と瞼が震え、ゆっくりと開く。
ぱちぱち、と、数回瞬きをしたかと思えば。
エースと視線が絡む。
エースを居抜く、ディープブルー。

『…おはよ、エースくん。もぅ、朝?』
「………へ…」
『エースく……ふぎゃ!!』

ガバッ、と、シャナメルを強く抱き締める。

「寝坊助メル!!やっと起きた!!」
『え???何???』

訳が判らないまま、シャナメルはエースにされるがままになっていた。



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