まぼろばの蒼月
009
「まァ、良いか。あいつらもまだ、この島に滞在するだろうしな」

キッドは、クスクス笑う。
ポートガス・D・エースと殺り合うには、シャナメル・オルフェウスにちょっかい出せば良いだけの事だ。
それに、興味が合った。
大抵のオンナ達は、肩書きや名声を重視する。
そして、見た目、もだ。
けれど、そう云う物に全く興味を示さないオンナが居るなんて、思っても見なかった。
"たった一人のオトコ"として、見てくれるオンナ。

[シャナメル・オルフェウス……か]

あの白い柔肌を蹂躙している、ポートガス・D・エース。
奪い取るのも一興、か。
ペロリ、と、舌先で乾いた唇を濡らす。

[奪ってやンよ。テメェからな]

キッドは悪戯を思い付いた子供の様に、クスクス笑う。

「キッド…!!」
「騒ぎは起こさねェよ」

恋愛ごっこ、ならお手のもの。
甘い言葉を囁いて、"ニコリ"と優しく笑ってやれば、オンナなんてコロリ、と騙される。
恋愛なんて、駆け引き。
そして、騙し合う。
騙した方が悪い?
嫌、騙された方が悪りィのさ。
まァ、あのオンナ、見た目は悪くねェ。
船に乗せ、"性欲の捌け口"として、利用してやるか。
ククク……、と、キッドは笑う。
キラーは、「またか」と呟き、盛大な溜息を吐いた。

「チェッ。エースが居ねェンなら、帰るか」

ルフィは、クルリ、と踵を翻し、ベポ達とキッド達を気にする事なく、その場を後にする。
キッド達も、何処かしら機嫌が良いらしく、「♪」と口笛を吹きながら、その場を後にした。

「は〜〜〜……助かったァ……」
「あァ。だが、次はないってェ言葉は事実だぜ。シャナメル・オルフェウスを見掛けても、声を掛けんなよ。相手はあの、白髭、なんだからな」

ギロッ、と、ベポを睨むペンギン。
ベポは、「うん………」と、何処かしら納得がいかない様子だった。

「一応、キャプテンの耳に居れておくか……」
「エッ!!」
「エッ、じゃねェだろ。ポートガス・D・エースに太刀打ち出来ンのは、ウチのキャプテンしか居ねェだろうが」

確かにそうだ。
エースは能力者。
能力者には能力者で対抗するしかない。
そうなれば、"キャプテン"しか頼れないのが事実。

「はぁあ………」
「ベーポ」
「判ってるよ。でも、折角、友達になったのに…」
「シャナメル・オルフェウスが一人の時なら、話し掛けても……大丈夫だと思うが………」

あの牽制を思い出した瞬間、シャナメルが一人で行動する筈ない事が、一瞬にて判った。

[諦めろ、なんて云えねェな]

ペンギンは、困惑した表情でベポを見ていた。




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