まぼろばの蒼月
008
「メルがテメェを庇うからな。今回は、見逃してやらァ」

エースは、ベポとペンギンを睨む。
そして、その眼光に鋭さが混じり、そして、殺気が宿る。

「だが…………次はねェ。その場で殺す」

威圧するように、指先に炎が灯る。
ペンギンとベポの背中に、嫌な汗が伝う。

『エースくんったら!!』
「メルは黙ってろ」
『うー……』

エースが怒っているのが判る。
けれど、今回の出来事に関しては、自分の所為でもある。
自分の髪さえ金具に絡まなければ、こんな事にはならなかった。
けれど、エースが怒ったのは自分ではなく、目の前に居るベポ達。
どうして、判ってくれないのだろう。
シャナメルは、唇を少しだけ尖らせて、ぷくっ、と、小さく膨らませる。
しかし、エースはエースで、ここでシャナメルを甘やかす訳にはいかなかった。
シャナメルの云い分も判る。
だが、ここで牽制をしておかないと、シャナメルにちょっかいを出す不貞な輩が増えるのは、目に見えていた。

『……』
「メル、帰るぞ」

グイッ、とシャナメルの背中を押すと、不機嫌極まりない表情のまま、大股で歩き出す。

『クマさん、ごめんね。またね』
「またはねェッ!!」
『エースくんの意地悪〜〜〜!!』
「意地悪でも良いンだよッ」

エースとシャナメルは、口喧嘩をしながら宿へと戻っていく。
それを見送った二人は、

「……ありゃ、牽制だな」
「え?」
「シャナメル・オルフェウスに手ェ出せば、ポートガス・D・エースが黙っちゃいねェって事だよ」
「うー……」

折角友達になったシャナメル。
別に、ちょっかいを出す心算はないのに、どうしてそんなにシャナメルを束縛するのだろうか。
ベポは、エースの行動が判らない。

「ありゃ。間に合わなかったか」
「チッ」

エース達と入れ違いに来たのは、ルフィとキッド。
そして、キラー。
残念そうに眉を下げるルフィとは対象に、キッドは不機嫌極まりない表情でベポ達を睨む。

「ンで渡すンだよ」
「え?」
「ったくよォ……」
「騒ぎになったら困るのはお互い様だろうが」

ペンギンの言葉に、忌々しく舌打ち。
下らない法律を守る必要が何処にある。
守る必要なんてない。
けれど、彼らはこの法律を守る。
その理由は、他の海賊達に笑われない為なのだ。




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あきゅろす。
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