まぼろばの蒼月
007 シャナメルside
「ホントにごめんね。あのままだと、シャナメルちゃんまで、何されるか……」
『クマさん、謝らないで。ボクは大丈夫。エースくんが迎えに来てくれるから』

島のとある広場に、何とか海賊達を撒いた白熊とシャナメルの姿があった。
どうやら、すれ違い様に、シャナメルの髪が、白熊の着ている服の金具に引っ掛かった様で。
シャナメルは、髪を切ると云ったが、白熊がそれを嫌がったのである。
だから、一緒に来るしかなかったのだ。

「名前、ベポなんだけど………」
『クマさんじゃ嫌???』
「まァ、熊だけど………」

ほんわか、とした空気が流れる。

『でも、ごめんね。電撃………』
「大丈夫だよ。ちょっと痺れるケド……」
『エースくんには、一切、効果がないんだけど……』

シャナメルは小首を傾げる。
どれだけ、怖い思いをしてもエースに、電撃が直撃する事はなかった。
その理由は、シャナメル自身がエースに対して、安心感を抱いている証拠なのだが、本人がその事を自覚していない。

「シャナメルちゃん。さっきから云ってるエースくんって、まさか、ポートガス・D・エースの事?」
『うん、そうだよ』
「…………やっちゃったよ………」

風の噂で聞いた事があった。
ポートガス・D・エースに"オンナ"が出来た。
オンナの名はシャナメル・オルフェウス、と云う。
シャナメルに対する執着心や、独占欲は異様な程凄まじく、ちょっかいを出せば、黙っちゃいない。
しかも、それはエースだけではない。
白髭海賊団の隊長達も同じく、シャナメルを妹のように可愛がっている、と云うではないか。
ベポは、自分の死刑執行令状に、判を押した気分になった。

『クマさん?』
「間違いなく殺される………」
『え?大丈夫だよ。エースくん、優しいから、そんな酷い事しないよ』
「それはシャナメルちゃんだけーーー…」

と云って、ベポは黙り混む。
ここまで虚しい突っ込みはなかった。
ニコニコ、と笑うシャナメルに、はぁあ、と重い溜息を吐く。

「ベポ?」

ベポとシャナメルは、声がした方を振り返る。

「ペ、ペ、ペ、ペンギン!!!!」
「そのオンナ、どうしたんだ?」
「ペンギン、どうしよう。おれ、間違いなく殺される」
「殺される?誰に?」
「ポートガス・D・エース」
『エースくんは、そんな酷い事しないったら』
「………シャナメル・オルフェウスか。アンタ」

ペンギン、と呼ばれた青年は、シャナメルをジロジロ、と、見つめると、思案の表情を浮かべた。
このまま、この女を置いて行けば、ポートガス・D・エースとの闘いになる事はないが、ベポの事だ。心配で置いていけないと云うだろう。
けれど、このままで居ると、間違いなく、ベポは殺される。

「キャプテンを呼……」
「メルッ!!!!」
「「ゲッ!!!!」」

鋭い声がした方を向けば。
殺気を身に纏うエースが居た。

『あ、エースくん』

パァッ、と、表情を変えたシャナメルは、エースの側に近付く。

「ケガは?痛いトコとかねェか?」
『うん。クマさんがね、守ってくれたんだよ』
「クマさん???」

エースは、シャナメルが云う"クマさん"を見る。
その熊は、シャナメルを拐った白熊。
鋭い視線が、ベポを射抜く。

『あのね、ボクの髪が、クマさんの服の金具に絡まっちゃって………』

シャナメルは懸命に説明をする。
エースは、ちゃっかりとシャナメルの腰を抱きながら、頭の中で整理をする。

「………」
『だからね、あの……』
「判った。今回は目、瞑る」
『ホント?』
「おれが嘘吐いた事あったか?」
『ううん。ないよ』
「だろ。で、そこの熊」
「ハィイッ!!!」

エースの凄んだ声に、ベポは震え上がった。





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