まぼろばの蒼月
006 エースside
「あの白熊、何処に行きやがった……ッ」

エースは、辺りを窺う。
細い路地を曲がり続け、気が付けば、エースも、追いかけていた海賊達も、撒かれていた。

[騒ぎを起こすな、って云ってたが……冗談じゃねェぜ]

シャナメルを目の前で拐われてしまった。
あんなに近くに居たのに。
一瞬の出来事に対応出来なかった自分が不甲斐ない。

「…………ぜってェ見つけて、消炭にしてやる」

シャナメルを拐った白熊も、その白熊を追いかけていた海賊達も、容赦はしない。
エースの怒りは、絶頂に達していた。
大体、シャナメルさえ出て行かなければ、こんな騒ぎにはならなかったのだが、そんな事はエースの頭になかった。
悪いのはシャナメルを拐った奴等。
シャナメルは被害者なのだ、と結論付けた。

「ーーーーー!!」

晴天なのにも関わらず、視界を掠めた電撃。
きっとあれは、シャナメルの電撃。
シャナメルは、怖い、と感じたら、放電するクセがある。
居場所は特定出来た。
後はシャナメルを奪回するだけ。
そして、シャナメルを拐った犯人達を、消炭にする。

「メル、迎えに行ってやっからな」

エースはそう呟く。
突然、白熊を追いかけていた海賊達が、後ろから近付く殺気に気付いたのか、振り返る。

「ヒィッ!!!」

海賊の一人が悲鳴を上げる。
それもそうだろう。
殺気を身に纏い、般若の表情をして走り込んで来るエースを見て、ビビらない筈はないのだ。
そして、エースの背後に見えるのは、不動明王である。

[[[[[[道を譲らないと、間違いなく殺されるッ!!!!!]]]]]]

誰もが自分の身が一番かわいい。
それは海賊達も同じ事。
エースの前に居た海賊達は、ザザッ、と、道を空けた。
その様は、まるで、モーゼの十戒の様であった。





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