まぼろばの蒼月
004
エースはゆっくりと、玄関のドアの鍵を掛ける。

[メルに逃げられる訳にゃ、いかねェンだよ]

周囲を窺いながら、足を進めていく。
目の前にある窓は小さすぎて、シャナメルが通れる大きさではない。
そっと、隣の部屋を覗くと、どうやら、キッチン兼リビングの様だ。
シャナメルが、居る。
町で買った食材を、冷蔵庫らしき物に入れている姿が見える。
シャナメルが食材に気を取られている間に、逃げ場を封じないといけない。
玄関の鍵は掛けた。
どうやら、この家には、勝手口はない様だ。
寝室は、リビングの横。
寝室まで追い詰めて、逃道を塞ぐか。
それとも、無理矢理連れ込んで、事に及ぶか。
エースは、乾いた唇を舌で潤すと、シャナメルが居る、キッチン兼リビングへと足を踏み入れた。

『………』

シャナメルは、エースの侵入に気付く事なく、食材を冷蔵庫に入れていく。
そして、冷蔵庫の中身を見て、今日の食事のメニューを考えている。

「みぃーつけた」
『!!』

ビクッ、と身体が強張る。
振り向き様、ギュッ、と、後ろから抱き締められる。

『………エース……くん!!?』
「鬼ごっこは終わりだぜ?メル」
『……何で……ッ』

どうして、エースがここに居るのか、全く理解出来ない。
モビーディック号は、既に出航した筈なのだ。
それなのに、どうして、エースがここに居るのか。
シャナメルは一瞬の内に、パニックになっていた。

「捜さないでって書いてあったけどよ、ありゃァ、"捜して"って云ってるようなもんだしな」
『……離して…!!』

ジタバタ、と、エースの腕の中で暴れるものの、びくともしない。

「なぁ、メル。知ってっか?」
『……な、何を……!!』

ニヤリ、と、エースが笑った気がした。
嫌な汗が背中を伝う。

「鬼ごっこで捕まったヤツは、鬼に"好き放題ヤられる"」
『……は!?』
「メルは鬼(おれ)に捕まったンだし、好き放題ヤられるンだよ」

クックック…、と、エースは喉の奥で笑う。

『ふざけないで…ッ!!』
「ふざけてねェよ」
『離してよッ!!』
「おれさ、怒ってンだよ」

ギュッ、と、強く抱き締められる。

「あれだけ、愛してンぜって云ったのに、メルしか要らねェって云ったのに、メルはおれを信じてなかったンだろ?」
『…違…ッ!!』
「違わねェ。だから、"お仕置き"を兼ねて、おれがどれだけ、メルを愛してっか、その身体に再度、教えてやるよ」
『やだ…ッ!!』
「逃がさねェ。メルはおれの"嫁"だって事を、ちゃんと自覚させてやっからな」

口角を右上に上げ、シャナメルを見つめる。
抱き締めた華奢な身体を肩に担ぎ上げ、大股で寝室らしい部屋に入っていく。

『離して!!降ろしてッ!!やだ……ッ!!』
「ダメ」

ペン、と軽くシャナメルの尻を叩くと、『きゃん』と小さな悲鳴を上げる。

『きゃあっ!!』

ドサッ、と乱暴にシャナメルをベッドに投げる。
その上にエースがのし掛かる。

『嫌…ッ!!』
「どれだけ嫌がっても、泣いても止めねェから」
『ーーーー…!!』
「メル、愛してンぜ?」
『嫌…ッ!!止めて!!お願い……ッ!!』
「聞けねェな」

ジタバタ、と暴れるシャナメルの腕をシーツに縫い付け、首筋に噛み付いた。






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