まぼろばの蒼月
003
島に逗留してから、はや8日。
今日もエースは、シャナメルの目撃情報を収集していたが、シャナメルの情報は皆無であった。
やはり、警戒していて、身を潜めているのだろうか。
それとも、この島にはもう居ないのだろうか。
余りの情報の少なさに、エースはテンガロンハットを被り直し、小さく舌打ち。
次第に苛立ちが募る。
すると、ちらり、と、エースとお揃いにした、テンガロンハットが視線の端を掠めた。
それに、身長、風体から見て、シャナメルである事は間違いなかった。
サファイア・ブルーの髪が、揺れる。

「メルは、こう云う時のツメが甘いンだよな。ま、そう云うトコがかわいいンだけど」

クスクス、と声を殺して笑う。
惚れた欲目とは、良く云ったものである。
何をやってもかわいい、と思ってしまう辺り、重症である。
しかし、今は、そんな事を思っている余裕はない。
シャナメルに気付かれたら最悪だ。
この島から逃亡するのは間違いない。
逃げられたら、探し出すのにどれだけの時間を要するだろう。
島なんて、山程点在している。
1ヶ所づつ、当たっている余裕なんてない。
エースは、気配を消し、シャナメルの後をつけた。




◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇




『これを下さい』

書いただろう、スケッチブックを見せる。
店主らしき男は、シャナメルの指定した野菜を無言で袋に入れていく。
そんなやり取りを見つめながら、エースはシャナメルの後をつけていく。
付かず離れず、歩いて行く事、数十分。
その間、様々な店を覗いたり、ナンパらしき青年達に声を掛けられるものの、スルーしたり。

「メルを"捕獲"したら、とっちめてやらねェとな」

等と物騒な事を考えながら、シャナメルの後をつける。

「………!!」

シャナメルがクルリ、と、急に振り返る。
エースは素早く、物陰に隠れた。

『???』

シャナメルは小首を傾げて、再び前を向き、歩き出す。

[ヤベェ、ヤベェ……。メルは視線に敏感だった]

視線にも注意しながら、シャナメルの後をつける。
暫く歩いて行くと、町よりも少し離れた場所にある家に、入っていく。
どうやらここに住んでいる様だ。
ここなら、事に及んでも、誰も邪魔しない。

「仔猫の"調教"は、"飼い主"の役目だからなァ」

クスクス、笑う。
気配を消し、そっとシャナメルの家に侵入を開始した。






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