まぼろばの蒼月
002
「おれのストライカーを出せ!!」
「ハイッ!!」

エースの声にビビった船員が、慌ててストライカーの出向準備に入る。
機嫌が悪い表情で、自室に戻ると、リュックサックに必需品を詰めていく。

「エース」
「仔猫を"捕獲"してくらァ」
「……優しくしてやれよぃ」
「さァな。かなりキてっから、捕獲しても暫くは帰らねェ」
「あァ……ソウデスカ」

シャナのヤツ………、エースの独占欲を理解してなかったな。
マルコは内心、ヒヤヒヤしていた。
シャナメルに対しての執着心は、異常だった。
ちょっと他の男にでも話しかけられでもしたら、すっ飛んで行くし。
常にシャナメルの側に居たエース。
エースの様子に、マルコは溜息を吐いた。

「………」

シャナメルの家出で、エースの中の何かがキレた。
これだけ"愛してンぜ"と告げても、"好きだよ"としか返さない。
身体を重ねても、その思いは通じていなかった。
自覚、なんて、もう待たない。
連れ戻して、首輪を着けて、裸のまま繋いでおく。
おれしか逢えないように、おれしか見ないようにしてやる。
ドス黒い欲望が、エースの思考を支配する。

「エース隊長!!準備出来ました」
「じゃあ行ってくらァ」

リュックサックを肩に担いで、エースは大股で出て行く。

「グララララララ…。エースはメルを捕獲しに行ったか?」

その様子を見ていたニューゲートは、「夫婦喧嘩は犬も喰わねェ」と呟き、「あいつ等はまだ夫婦じゃねェよぃ」と、マルコに突っ込まれる。

「親父、シャナが出て行ったの、知ってたな?」
「………エースがメルの"全て"を受け入れてるって事を判らねェと意味がねェからな。おれから云ってもダメだ。おれ等は、お帰りって迎えてやりゃあ良いのさ」
「…………セイレーン族であってもかよぃ」
「あァ。メルはおれの娘……いや、息子の嫁だ」
「………エースは親父に似たよぃ」

シャナの意思なんて関係無しに進める所なんてそっくりだよぃ、と呟いた。



◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇



ストライカーをすっ飛ばして、先程まで上陸していた島に辿り着いた。
きっと、この島に居る。
そんな考えの元、キョロ、と辺りの店に伺い、シャナメルの風体を告げても、「知らない」と云う言葉で告げられる。

「それもそうだよなァ」

来たのはきっと夜の間。
人知れず、動く事が出来る。
2・3日様子を見るしかない。
エースは、適当な宿に入ると、宿泊の手続きを踏む。
用意された部屋に入ると、ベッドに横たわり、クスクス、笑う。

「逃がさねェからな。メル」

おれなしでは、生きられない様にしてやるよ。
エースは、狩りを楽しむように、笑った。







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