まぼろばの蒼月
006
少女の家から立ち去り、2人は無言のまま、ひたすら歩いた。
その間、エースは何度も振り返っては溜息を吐く。

[エースに春が来たかよぃ]

確かにあの少女は美しかった。
サファイア・ブルーの髪に、ディープ・ブルーの瞳。
年頃になればきっと、イイ女に育つだろう。
けれど、おれ達は海賊だ。
陸には住めねェ。
少女と住むにゃ、エース、お前が"船を降りる"しかねェ。
それが出来るのかよぃ。

云いたい事は一杯あるが、どうしようもないのだ。
事もあろうか、年下に一目惚れ。
諦めろ、としか云えない。
そんな折ーーーー…。

「火事だーーーーッ!!」

一人の男の声に振り返れば。
モクモク、と黒い煙が空に向かって手を伸ばしている。

「あの方角は……」
「あ!!アンタ達、無事だったのかい?シャナメルはどうしたんだい?」
「シャナメル……?無事……?どう云う事だよぃ」
「……一緒じゃないのかい?」

何かに気付いたのか、エースは突然走り出す。
どうして、あんなに哀しい顔で笑ったのか、どうして、急に冷たくなったのか、やっと判った。
"知っていた"んだ。
"判っていた"んだ。
自分の身に何が起こるのか。

「バカヤロウ…ッ!!」

エースは一言だけ叫んだ。

「バカはお前だよぃ」
「マルコ!!」
「そんなんじゃ間に合わねェよぃ。さっさと背中に乗んな」
「サンキュー!!」

マルコは、自身の能力、"不死鳥"に変化し、空へと舞い上がった。







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