まぼろばの蒼月
011 エースside
町外れの広場。
ここだと、一暴れしても誰にも迷惑を掛ける事はない。
シャナメルを賭けての決闘には持ってこい。
エースとシュエルの間には、冷たいブリザードが吹き荒れる。
睨み合う火花が飛び交う。

「シャナメル嬢とはどう云う関係なのだ?」
「メルはおれの女だよ」
「な………ッ!!認めないよ!!彼女が海賊の"娼婦"だなんて!!」

シャラン、と、刀を抜く。
抜き身の刃が、ギラリ、と光る。

「"娼婦"じゃねェよ。おれの女……、間違えた。メルはおれの嫁」
「「なっ!!!」」

得意気に笑うエースに、シュエルだけではなく、ハルタまで驚きの声を上げた。

「いつの間に結婚したんだよ!!」
「認めない!!尚更、彼女はこの私の横にいるのが幸せなんだ!!」
「メルは誰にも渡さねェ。メルを幸せにするのはこのおれだ!!!」

エースの鋭い眼差しが、シュエルを射抜く。
二人の殺気が膨れ上がる。
間合いを詰めるように、ジリジリ、と動く。
シュエルは"中将"クラス。
雑魚とは違う。
下手に動けば、斬られるのは必定。
シャナメルの泣き顔だけは見たくなかった。
吐き気を催す殺気が、ハルタを襲う。

[あんなエースは久し振りに見る。よっぽど、シャナを失いたくねェんだな]

ハルタは、真剣な眼差しで、二人の決闘を見ていた。
手出しはしない。
"海軍"vs"海賊"じゃない。
男同士の闘いなのだ。
ハルタに出来る事と云えば、この決闘を見守る事と、邪魔をする輩を排除するだけ。

[ここは、おれが引き受けてやるから、思う存分やり合え。シャナを失いたくねェならーーーー……]

ハルタは、そう心の中で呟いた。





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