まぼろばの蒼月
010
『エースくん、まだ結婚とかは早過ぎるよ』
「じゃあ、子供は産んでくれるんだろ?」
『いや、だからね……』

付き合ったばかりだ、と云うのに、もうはや、子供の事。
幾ら何でも早過ぎる。
どうして、ここまで固執するのか、シャナメルには理解出来なかった。

「嫌か?」
『嫌とかそう云うのじゃなくてね……』
「おれの事、嫌いか?」
『エースくんは好きだよ。けどね、まだ二人きりで居たいの』
「メル……」

甘ったるい雰囲気が漂う。

『ーーーー…赤ちゃんの事も、結婚の事もちゃんと考えるから』

かぁあ、と頬を紅く染めて、下を向く。

「おれ、本気だから」
『……うん。ちゃんと考えて、返事するーーー…』

シャナメルの言葉を遮る様に、

「マイハニー!!」
『ふぎゃあああぁあ!!!』
「グォオオオ!!!」

シュエルの声に、シャナメルは飛び上がる様に驚くと、エースの腕の中に逃げ込んだ。
そして、相変わらずの放電が開始された。

「あ〜……やっぱり」

シャナメルの放電が終わった頃、エースは溜息を吐く。
しかし、不思議なのは、どうして自分に被害がないのか、である。
普通なら、とばっちりを受けても支障はないのだが、一切ないのが不思議である。

「アイツが……?」

黒焦げ金髪の長髪で、海軍の制服に身を包ませた長身の男。
エースとシュエルの間に火花が飛び交う。

「マイハニー……ソイツは……」
「テメェがメルにつき纏う男かよ」
『………ヤダヤダ!!アイツ、嫌い〜』

ガタガタ、と、震えるシャナメルを見つめる。

「その面……ポートガス・D・エースか!!」
「だったらどーした?」

シュエルは腰に帯びた剣に手を掛ける。

「ここじゃ、騒ぎになる。表に出な」
『エースくん……ッ』

不安そうな眼差しで、エースを見つめる。
エースはクス、と笑うと、ぽんぽん、とシャナメルの帽子を柔らかく叩く。
ガタリ、と立ち上がると、エースは伝票を手に、イゾウ達の下に向かうと、

「メルを頼んだ。ついでにこれもな」
「ちゃっかりしてるぜ。エース」
「見届け人として、付いて行ってやるよ」
『エースくんッ』

不安そうな眼差しで見つめてくるシャナメルの唇に、右手の甲を押し当てる。
そして、それを自分の唇に当てた。

「戻って来たら、こっちにして」

ニヤリ、と笑うと、ハルタと共にカフェを後にした。

「エースは大丈夫だ」
『………うん』

シャナメルの眼差しは、エースが去った方を見るしか出来なかった。





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