まぼろばの蒼月
008
『ん?』

ポツリと溢した独り言。
それがまさか、空気を凍らせたなんて思っていないシャナメルは、小首を傾げて、ナース達を見つめていた。
すると、会議が終わったのか、ぞろぞろ、と、会議室から出て来る隊長達。

『あ…エースくーん』
「メル」

トトト、とエースの側に近付く。
エースは柔らかい笑みを浮かべて、シャナメルを見つめる。

『あのね、外に行きたい』
「買い物か?」
『それもあるけど……』
「良いぜ。支度して来いよ」
『ん』

パタパタ、と自室に戻って行くシャナメルを見送るエース。
そして、その様子をニヤニヤ、と笑いながら見つめる、マルコを始めとする隊長達。

「デートかよぃ」
「まぁな」
「シュエルにゃ気を付けろよ」
「あァ。判ってる」

今回の会議では、先駆けの順番は勿論の事、シャナメルの事も議題に上がっていた。
早くシャナメルを"娘"として紹介しなくてはいけないのだが、シャナメル本人は、ニューゲートの事を"白ひげさん"と呼ぶ。
決して"お父さん"とは呼ばない。
それが、"娘にはならない"と云う拒絶のサイン。
どうにかして"娘"として紹介したいニューゲート。

『お待たせ』
「ん。ほら」
『???』
「手」
『ん…』

きゅっ、と手を繋ぐと、そのまま街に繰り出した。
それを見送る隊長達。

「エースは説得出来るかよぃ」
「さぁてね」
「じゃあ、おれらも行きますか」
「おぅよ」

イゾウとハルタは、エース達から遅れて、街へ繰り出した。
エースとシャナメル、2人を影から見守る為に。



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あきゅろす。
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