まぼろばの蒼月
005
少女の後を追うように歩き始めて約10分。
2人を出迎えたのは【廃墟】と呼んでも過言ではないぐらいの家であった。

「………マジかよぃ」
「………………」

ひょこ、とドアから覗きこんでくる少女を見て、間違いなくこの家は、少女の家なのだろう。
エースとマルコは、少女に気付かれない様に小さく溜息を吐くと、その家に足を踏み入れた。

「………」
「あの女ァ…」

入ってみて判った。
少女の家は廃墟じゃない。
キア達によって、半壊状態にされていたのだ。

『何時もの事、へーき』

少女は、救急箱らしきケースを手に、エースの前に来ると、ガタガタ、と椅子を引く。
どうやら、ここに座れ、と云っているらしい。

「お前、両親は?」
『死んだ』
「病気でか?」
『ううん。目の前で殺された』
「ーーーー!!!」
「エース?」

驚愕に目を見開くエースに、眉根を寄せる。

「誰に殺されたンだよ…?おれが……このおれが、そいつを殺してやる…ッ」

エースの声の低さに、マルコは驚きを隠せなかった。
この少女に同情するべき点は沢山ある。
だが、同情しても、この少女の親の仇を討っても、何もならない。
おれ達に出来る事はたった1つだけ。

『ありがとう。でも良いの。ボクは誰にも必要とされてないから』
「ンな事ねェ!!おれがッ!!」
『……ハイ。手当て終わり。この話も終わり』

少女は哀しく笑った。

「エース」
「………」
『もぅ、帰る時間だね。元気でね』

少女はそれだけを云うと、奥の部屋へと消えていった。
"早く帰れ"と、無言で訴えていた。

「エース、行くよぃ」
「………」

マルコはエースの腕を引き、立ち上がらせる。

「おれ達は海賊だ。それを忘れるンじゃねェよぃ」
「………ああ」

たった独りで、この【廃墟】に住んでいる少女。
助けてやりたいのに、助けてやれない不甲斐なさ。
気紛れで立ち寄った島。
そんな中で出逢ってしまった少女。
どうして、こんなに心がざわめくのか、エースには判らなかった。




◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
キアside

シャナメル………。
あたしはアンタを許さない。
あたしに恥を掻かせたあの娘。
殺したいぐらい憎たらしい。
絶対に許さない。

そうよ。
死んじゃえば良いのよ。
どんな方法で殺そうかしら?
絞殺?刺殺?
でも、あんな化物の体液なんて見たくもないわ。
確か、魔女は火炙りだったわよね?
そうよ。
焼き殺してしまえば良いのよ。

「フフッ」

キアは歪んだ笑みを浮かべ、電伝虫に手を掛けた。
シャナメルを殺す為に。



キアside………end





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