まぼろばの蒼月
005 マルコside
「ーーーー…なるほどねぃ」
「シュエル中将……か」

シャナメルと買い物に付き添った船員達から事情を聴いたマルコ達は、「やれやれ」と呟いた。
エースとシャナメル、2人の"兄"がわりである隊長達の脳裏に"要注意人物"として挙げられたシュエル。
とにかく、シャナメルの買い物には、護衛を付けなければならなくなってしまった。
護衛を、と云っても、エースが居る時はエースが付き添うだろう。

「しかし、シャナメルも大変だ」
「そうだな。エースと海軍中将、2人に惚れられちまったしな。それにエースはシャナに対して独占欲が強いしよぃ」
「ま、それだけシャナにぞっこんなんだろうが……」
「おれは認めねェぞ!!大体、メルちゃんとエースが付き合う事自体が……」
「時既に遅い。見てみろよぃ。エースの部屋の前の人だかり。ありゃ、ヤり始めた証拠だろぃ」

マルコが指差す方を見れば。
船員達がエースの部屋の壁に耳をあて、中の様子を伺っている。
男所帯の中で、ナースを除いた女と云えば、シャナメル1人。
しかも、エースと付き合っているとなれば、肉体関係があるのは必然。
金が掛からない方法で、己の性的欲求を発散する方法と云えば、"他人"の"性的行為を見る"か"聞く"しかないのだ。
しかし、異様な程の数に、マルコは苦笑いを浮かべるしかなかった。

「メルちゃんが…メルちゃんが既に、エースの手付き………」
「今頃!!!」

サッチの言葉に、クリトルは突っ込み、「儚く失恋だな」と、イゾウは止めの一撃を放つ。

「ンな事より、シュエル中将だよぃ」
「対策を練るしかねェな」
「掻っ攫われても困る」
「確かにな。とりあえずは、シャナメルを1人で街に行かせねェこった」
「そうだな。出掛ける時は、隊長格と一緒に行くのがベスト、って事か」

エースとシャナメルが部屋に隠っている間に決まった事柄。
シャナメルとエースの事情なんて二の次。
兄として、"弟"と"妹"は守ってやらなければならない。
例え"過保護"と云われても、構わない。
それが家族と云うものだ、と思う。

「でーーーー…シャナを怖がらせた罪は罪だな」
「「え?」」
「おれらが鍛え直してやる」
「「ヒィイイッ!!!」」

船員達の悲鳴を他所に、マルコ達は、クツクツ、と喉の奥で笑う。
その笑みは、まるで玩具を手に入れた子供のようであった。




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