まぼろばの蒼月
001
「メールー…、メールー」

ガチャリ、とドアを開けると、探し人の姿は無く。
次から次へと、ドアを開けて探す。
が、見つからない。

「アイツ……何処行った?」

小首を傾げて、居そうな場所を探す。
しかし、 見つからない。
ふぅ、と小さく溜息を吐くと、船員達の憩いの場となっている部屋へと向かうと、ソファーにごろり、と横になった。

[しっかし、何処行ったんだ?]

エースは、テンガロンハットを顔までずらすと、瞳を閉じる。

[折角、ストライカーに乗せてやろうと思ったのにな]

エースが偵察に向かう時に使用するボート。
それに乗せてやろうと考えていた。
幾ら、"恋人同士"になった、と云えど、デートらしいデートが出来ていない。
このままでは、あの日だけしか、シャナメルを抱けない。
それだけは絶対に嫌だ。

[………もしかして、避けられてる?]

そう思った瞬間、ガバリ、と起き上がる。

[初めての時、ヤり過ぎたとか?]

うーん、と、小首を傾げて考える。

[………少し、強引過ぎたとか?]

考えれば考えるほど、ドツボに嵌まる。

[だぁあッ、判らねェよ]

ガシッ、と頭を掻き毟る。
シャナメルの心情が判らないまま、考えてみても、最悪な事ばかり。
シャナメルを初めて抱いた瞬間、1度だけではもの足りず、何度もシャナメルをこの腕に抱いた。
初めての経験、と云うのが、頭の中からごっそり、と抜け落ちてしまっていた。
タガが外れたのだ。
欲望のままに、シャナメルを翻弄し、何度も胎内に吐き出した。
シャナメルがエースを避ける理由に当て嵌まる。

[どうしよう………避けられてるかも知れねェ……]

はぁあ、と盛大な溜息を吐く。
すると、ダダダダダ、と、船内を走る音が聞こえた。

「何だァ?」

エースはソファーから立ち上がると、ひょこ、と顔を覗かせる。
そこには、必死の表情で、駆け抜けるシャナメルの姿があった。

「メル?」
『…エースくんッ!!!』

エースの姿を見つけるや否や、勢いよく抱き着いてくる。
どうやら避けられてる訳ではないらしい。

「メル、どうした?」
『……外怖いッ。もうやだ』
「???」

いきなり、外怖い、と云われても、事情を知らないエースは小首を傾げるしかなかった。

『絶対に行かないもん』
「どうしたんだよ?メル」
『うー…』

ぎゅう、と、しがみ付く力が強くなる。
シャナメルの状態から視て、何かしら怖い思いをしたのだろうか。
触れている場所が震えていた。





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