まぼろばの蒼月
004
「運動にもなりゃしねェ」

パンパン、と手を払い、キアを睨む。

「ヒッ……!!」

少女を押さえていた女達は、エースとマルコが近付く度に、ガタガタ、と震え上がった。

「おっ、覚えてなさいよっ!!」

ドンッ、と、少女を突き飛ばし、一目散に逃げ出す。
その姿にエースはゲラゲラ笑っていた。

「大丈夫かよぃ?」
「………」

少女はコクリ、と頷くと、踏み荒らされた果物達の欠片を拾い集める。
ポロポロ、と涙を零して拾い集めるその様を見た2人は、何にも云えなくなってしまった。
少女が全てを片付ける間、マルコは、自分達が犯した過ちに気が付いた。

"今日はたまたまおれ達が居た"

だが、おれ達は"明日からはいない"のだ。
この先、この少女はどうやって生活をしていくのだろうか。
きっとあの女の事だ。
今回の一件を逆恨みし、もっと酷い事をしでかすだろう。
この少女がそれに耐えうるのだろうか。
けれど、もし見なかった事にしたら男が廃る。
"白髭海賊団"の名に傷が付く。
そんな事は死んでも嫌だ。
ぐるぐる、と同じ考えが脳裏を過る。
そんな中、少女がエースの服の裾を引く。

「何だァ?」
『怪我してる。手当てする、ついて来て』

少女の声が頭に響く。

「マルコ、アイツ、手当てするからついて来いだと」
「喋れるのかよぃ」
「嫌、頭に響いた」

驚いた様に少女を見ると、砕けた果実が入ったバスケットを手に、振り返るその姿。
ついて来い、と云ったのは、どうやら真実の様で。
エースとマルコは、その少女の後を追うように歩き始めた。





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