まぼろばの蒼月
003
「テメェら、良い加減にしやがれ!!」
「ぐあっ!!」

エースの蹴りにより、屋台の側に居た男が吹っ飛ぶ。
そして、その横に居た男は、マルコの拳を顔面に受け、後ろへと下がる。

「エース、手加減しろよぃ」
「これでも手加減したんだぜ。そうでなかったら、こいつら死ぬぜ」
「なっ…何なのよ!!アンタ達ッ!!」

突如現れたエース達に、キアは悲鳴を上げる。

「単なる通りすがりのおっさんとガキだよぃ」
「誰がガキだよ!!」

そんなやり取りを他所に、キアの顔が険しくなる。

ーーーー……折角遊んでいたのに、横から邪魔するなんて許せない。

キアの爪先に当たっただろうククル。
そのククルが、エースの前に転がって来る。
そのククルを拾い上げ、ゴシゴシ、と服で汚れを落とし、シャク、と齧り付く。
芳醇な甘さと、爽やかな酸味が口の中一杯に広がる。

「ンめェ。この旨さが判らねェなんてよっぽどの味音痴だぜ」
「どれ、おれも」

マルコも屋台に残っていたククルを囓る。

「おっ、エースの云う通りだよぃ。この旨さが判らねェなんて、人生の半分は損してるな」

ククッ、と笑うエースとマルコ。
その様子に、ますます、キアの機嫌は悪くなるばかり。

「相手はたった2人よ!!ちゃっちゃとやっちゃってよ!!」

キアの言葉に、男達は、エースとマルコに襲い掛かる。

「一暴れすっか」
「親父にゃ一緒に怒られるしかねェよぃ」

2人はどこか愉しそうに、襲い掛かる男達を見つめていた。



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