まぼろばの蒼月
002
「いらっしゃい、いらっしゃい」
「今日はクラバが新鮮だよ〜!!」

どうやら、この島には大きな街があるのか、それともリゾート地なのか、意外と人が大勢居た。
エースとマルコは、賑やかな街並みを歩いて行く。

「賑やかだねぃ」
「………」
「まだ拗ねてンのかよぃ」

ブスッ、とした表情のエースを見て、マルコは苦笑いを浮かべた。

「アンタ、ココで商売して良いと思ってンの!!」

そんな中、女の金切り声が、愉しい空間を引き裂いた。

「何だァ?」
「オイ、エース!!」

人だかりが出来た場所へと足を向けるエース。

「ったく…」

はぁ、と小さく溜息を吐いたマルコは「やれやれ」と小さく呟いて、エースの後を追った。

「………」
「聞いてるの?!!誰に許可を得て店出してる訳?」
「………」

ちょこん、と座っている少女に対し、20代ぐらいの男女が、数名囲って居た。
少女は無表情なまま、言葉を交わす事はなかった。
それがますます、怒りを頂点へと向かわせる。

「何とか云えよ」
「………」
「あらァ、このククル、不味そう。目障り」

女の手が、紅く芳しい匂いを放つリンゴに似た果実、ククルを掴み、地面へと叩きつけた。

「!!!」

ククルは、グシャリ、と音をたてて砕ける。
その様を見た少女は、その砕けたククルを拾いながら、ポロッ、と涙を零した。
ククルの欠片を拾っては、撫でて涙を零す。
まるで、砕けたククルに謝罪をしているようだった。

「バッカじゃないの?たかだかククル1つで泣くなんて」
「キアお嬢さん、もうここら辺で勘弁してやって下さい。この子が喋れない事はご存知でしょう」
「煩いわねェ。市長のパパに云って、商売をさせないようにしても良いのよ?」
「ぐっ…!!」

どや顔で云い放つ女はーーー…キアは、どうやらこの街の市長の娘らしい。
そしてそれを取り巻く男女がニヤニヤ、と、下卑た笑いを浮かべていた。

「あァあ、臭いククルに鼻が曲がりそう」

その言葉を待っていたかのように、男達が、屋台に乗っていた果物達を、踏み荒らす。

「ーーーー!!!」

コロコロ…と転がる果物。
「ヒャハハハハ」と笑う男達と、少女を押さえる女達。
少女は言葉にならない悲鳴を上げて、暴れるものの、数人の手がそれを邪魔していた。

「マルコ…悪ィ……おれ、我慢の限界!!」

ギリッ、と握り締めたエースの拳は、ポタポタ、と紅い雫を溢していた。

「エース、おれもだよぃ」

パキッ、と拳を鳴らして、2人は騒ぎの元へと向かった。






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