まぼろばの蒼月
003
『…………おーろーしーてー…』
「やなこった!!」
『ねェってばァ』
「嫌だ」
『〜〜〜〜〜〜ッ』

顔を赤らめて、エースに交渉するものの、即様却下。
今のシャナメルの状況は、食堂にて、エースの膝の上に乗っている状態。
云わば、膝上だっこ。
絶賛、羞恥プレイ中である。

「エース、シャナメルにも仕事があンだろ」
「…………」

ブスッ、とした表情のまま、ちゃっかりと腰に手を回して居るのが、何処と無くムカつく。

『まさか、あれで起きるって思ってなかった』
「……約束は約束だろ」
『………ッ』

朝御飯を食べる処か、シャナメルも困惑しているのを見て、盛大な溜息を吐くのはビスタ。

「シャナメル。何を云ったんだ?」
『…………』
「今すぐ起きたら、ご褒美のキス」
「「「「「何ィッ!!!!!」」」」」
『だってェッ、起きなかったら、そう云えって、料理長が………』
「したのか!!!」
『ほっぺに………でも…』
「あれはキスじゃねェ」
『………それから離してくれない』

フルフル、と、怒りに肩を震わせるビスタ達。
エースは、「フフン」と笑い、ちゃっかり、シャナメルの抱き心地を堪能中。
しかも力が強すぎるのか、次第に息苦しくなってきていた。

「エース、表に出ろ」
「ア?」
「良いから表に出ろ!!」
「上等!!」

一触即発な雰囲気に、シャナメルの困惑は益々広がるばかり。
それに、力が入るのか、抱き締められる力が強まり、息苦しさも増していく。

「グラララララ…朝っぱらから何の騒ぎだ」
「「「「「親父ッ!!!!!!」」」」」
『白ひげさんッ?!!』

ニューゲートの登場に、緊張感が走る。
ドカドカドカ、と決められた椅子に座ると、火花を散らしているエースとビスタ、そして、真っ赤な顔をして困惑しているシャナメルを視界に止めた。

「ったく……朝っぱらから下らねェ騒ぎを起こしてンじゃねェ」
「けど親父ッ」
「エース、メルを離してやれ。メルには刺激が強すぎる」
「刺激?」

はた、と、腕の中に居るシャナメルに視線を移すと。
くてっ、と、何かに逆上せ上がったのか、脱力していた。

「メル!!」
「云わんこっちゃねェ。メルはまだまだお子ちゃまだからな」
『ふしゅぅ………』
「嫌、抱き締めすぎただけだろ……」

遠くからこのやり取りを見ていた料理長はそう呟かずには居られなかった。






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あきゅろす。
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