まぼろばの蒼月
001
モビーディック号の朝は"戦争"である。
何せ1600名余りの食事を作るのだから、戦争と云う言葉が良く似合う。
シャナメルが"調理見習い"として決まって数日経ったが、納得出来ないのが数名居た。
ブー垂れるのを宥めるのには苦労した。
エースに関しては「シャナメルの手作りが食えるぞ」と云い、ナース達には、「料理長の下なら、シャナメルの貞操は守れるし、スイーツ作ってくれるかも知れねェぞ」と、云って宥めた。
シャナメル人気、恐るべし。と、痛感した。
しかし、幾ら宥めたと云えど、納得出来ないエースは「メルに手ェ出したら、消炭にしてやる。特にサッチ」と、脅し文句も忘れない所がちゃっかりしていた。
そんな中、ぞろぞろ、と、食堂に姿を見せる船員達。

「シャナメル、エース隊長を起こして来い。起きなかったら、前に教えた言葉を云え」

シャナメルは、こくん、と頷くと、トトト、とエースの部屋に向かった。

「料理長、シャナメルは何処に向かったんだ?」
「エース隊長を起こして貰いに行った」
「大丈夫かよ」

エースは朝が苦手。
食事の時間だと云っても、なかなか起きては来ない。
朝・昼兼用だったり、はたまた、夜だけしか食べなかったりと不規則なのだ。
だから、何時も起こしに行っていたのだが、エースを起こすのは命がけなのだ。
寝惚け眼で、正気ではない為、容赦なく殴りかかって来る。
良く今まで、死人が出なかった物だと感心するが、何時かは死人が出てしまう。
それ故、同じ隊長格に起こしに行って貰っていた。

「メールちゃんッ……て、あれ?メルちゃんは?」

近くに居た調理人の船員に尋ねる。

「シャナメルなら、エース隊長を起こしに行きましたが……」
「何ィ!!!!!」

サッチの叫び声に、食堂に居た船員達、及び、マルコ、ビスタ、クリエルは驚いた。

「朝っぱらから煩ェよぃ。何事だぃ」
「メルちゃんが危険だッ!!!」
「シャナが?」
「エースを起こしに行った………」
「「「何だって!!!!」」」

サァッ、と、背筋に悪寒が走った。








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