まぼろばの蒼月
010
「メール。ここに居たのか」

ふわり、と身体を包み込む温もり。
ビクッ、と、身体が強張る。

「こんなに身体冷やして。ダメだろ」
『………どうして…』
「ン?」
『…優しくするの…?優しくして、何になるの!!どうせ、要らなくなったら"棄てる"癖に!!』
「棄てねェよ。云っただろ」

エースは、ゆっくりとシャナメルの身体を離すと、自分の方に向ける。
ディープブルーの瞳が、不安気に揺れる。

「好きだ」
『………』
「愛してんぜ」
『………』
「メルを棄てる?バカ云うなよ。メルはおれの」

ニカッ、と笑うその笑顔。
ここまであからさまに、想いを告げてこられる事なんてなかった。
どう対処したら良いのか、全く判らない。
ぽろぽろ、と流れ落ちる涙を指先で拭う。

「泣くなよ。なぁ、信じらんねェ?」
『………』
「じゃあ、態度で示すか」
『………え?』

クイッ、と指先で顎を持ち上げられる。

『…ちょっ……!!』

"何をされるのか"、判ったシャナメルはエースから逃れようと、身体を捻る。
しかし、そう簡単に逃げられない。
ガッシリ、と抱かれた腰に、固定された後頭部。
"キス"から逃れられない。
が、ある事に気が付いた。
ドアの隙間から見える人影。
その影は1つではない。

『ひっ、人が見てる前で、キスなんてしたくないッ!!』
「………ア?」

云われて、シャナメルが見ているドアを見れば。
影達がビクリ、と揺れる。

「テメェら………ッ!!!!!」
『………』

覚悟を決めた様にドアが開かれ、姿を見せたのは、マルコを始めとする隊長達と、船員達。

「エース………エヘッ」
「エヘッ、で済ませられるかァッ!!!!」

エースの怒声がモビーディック号に響き渡る。

「さっきの雰囲気返せッ!!」
「無理だよぃ」
「どーしてくれンだよ!!!折角、メルのエロ顔が見れるって云うのにッ!!!」
『………は?』
「………エース…、今の言葉で雰囲気処か、好感度、下がった」
「………誰の所為だよ!!」
『………信じらんない…もうッ!!最低ッ!!知らないッ!!』

シャナメルは、エース達を睨むと、そのまま船内へと入っていった。

「シャナメルのエロ顔が見てェって、お前、現に、キスしたんだろうがよぃ」
「したけど、あン時は、他の事にーーー…」

キスした時の状況がエースの脳裏に過る。
デレッ、とした表情に、

「何を見た?」
「全部見た」
「全部って………」
「そりゃ、身体の隅々」
「スリーサイズは?」
「98・54・82……グッ」

バコーン、と何かがエースの頭に直撃する。

クワァン…コロコロコロ……ハフッ。

それは間抜けな音を立てて、止まる。
その先を見れば、フルフル…と怒りに肩を震わせるシャナメルの姿があった。

『……バカァッ!!!』

シャナメルの怒声が静かなモビーディック号に響き渡り、暫くは、誰も口を聞いて貰えなかったのは云うまでもなかった。








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