まぼろばの蒼月
007
「は?」
「ーーーーー…それが解呪の方法です」

アスカのことばを聞いた瞬間、ニューゲート達は、こめかみを押さえた。
エースの"自覚がない"以上、シャナメルに掛けられた呪が解ける確率は低い。

「いや〜んッ。ロマンチック」
「エース隊長、王子様になれるかしら」
「大丈夫よ。なってくれるわよ。てか、ならなかったら、シメる」
「おいおい、隊長格に叶うかよぃ」

物騒な言葉を並べ立てるナース達に、苦笑いを浮かべながら、マルコは、アスカを見た。

「しっかしまぁ、何で解呪にそれを選んだ?」
「………全てに絶望し、成長を拒絶していた娘。だからこそ、私は希望を与えたかったかも知れません」
「"希望"ねぃ。ま、兎に角、エースがーーー…」

すると、ダダダダダ、と、盛大に走る音が響く。

「何だァ?」

ひょこっと、外を覗けば。
噂の主であるエースの姿があった。

「エース!!!テメェ、何時の間に戻って来たんだよぃ!!!」
「知るかッ、てか、ナース達の誰でも良いから、服ッ!!」
「服???」

服を何に使うんだ?
小首を傾げて、エースを見るものの、アスカとミクだけは、クス、と笑った。

「心配は無用でしたね」
「ええ。良かった」

その発言に、ナース達は黄色い悲鳴をあげ「王子様は居たのよ」と、訳の判らない言葉を並べ立てていた。

「グララララララ……自覚したか」
「エース………おれ達が心配してたのを他所に、テメェ、シャナメルとヨロシクやってたのか………」
「ヤってねぇ!!そりゃヤらしてくれるんならヤりてェけど……」

ゴニョゴニョ、と歯切れの悪い言葉を呟く。

「偶然の産物かも知れねェよぃ」
「取り合えず、ナース」
「判ったわ。シャナメルちゃんは?」
「おれの部屋に居る」

コクッ、と頷くと、シャナメルの様子を見に、エースの部屋へと向かった。

「エース、事情を説明しろよぃ」
「え、あァ………」



◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇



眩い光が消えた瞬間、シャナメルの家の前に居た筈なのに、周りを見回せば、エースの自室に居た。

「な、何が起こったんだ………」
『く、苦しい…』

ギュッ、と強く抱き締めて居た為か、息苦しさに、シャナメルは抗議の声をあげた。

「あ、悪リィ……!!!」

シャナメルを離した瞬間、エースは固まった。
キスするまでは、四歳児並の大きさしかなかった。
それなのに、今、目の前に居るシャナメルは、年相応な大きさで。
透き通る様な白い肌は、月の光を反射するように、仄かに輝いて。
肩まであった髪は、腰辺り迄に伸びていた。
キュッ、と締まったウエストラインに、顔に似合わず、大きな乳房に、ゴクリ、と固唾を飲んだ。

『?』

何が起こっているのか判らないシャナメルは、小首を傾げている。
それがまた、エースの欲望に拍車を掛ける。
下半身に熱が集まって行くのが判る。
けれど、ここでシャナメルを抱く訳にはいかない。
もし、強引に抱いてしまえば、シャナメルはいなくなってしまう。
それだけは嫌だ。

"ずっと側に居て欲しい"

だからーーーーー…。

「メル」
『何?』
「お前、デカくなった」
『は?』
「何でか知んねェけど、成長して、モビーディック号のおれの部屋に居る。おれはお前の服、借りてくっから、ここから動くな」

そう云って、部屋から飛び出した。


◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇


「と、云う訳だよ」
「なるほどねぃ」
「……………」
「お、親父……?」

不気味な程静かなニューゲートに、エースはたじらう。
しかし、それは杞憂に終わった。

「グララララララ!!良くやった!!それでこそ、一端の男であり海賊だ!!惚れた女に逃げられたとあっちゃあ、男が廃る。良いか、エース」
「おぅ」
「何がなんでもシャナメルを口説き落とせ」
「親父!!!」
「シャナメルの意思は何処にいったんだよぃ」

マルコの突っ込みに耳を傾ける事はなく、ここにシャナメルが居たら卒倒するような内容に、マルコは痛む頭を抱えたのは云うまでもなかった。



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!