まぼろばの蒼月
006
「エースは、シャナを見つけたかねぃ」

マルコは、ふぅ、と溜息を吐く。

「惚れた女すら捕まえらねェ様じゃ、海賊じゃねェ、嫌、男じゃねェ」
「まァねぃ。エースが気付けば多少は違うんだろうけどよぃ」

重い沈黙。
変われる物なら変わってやりたい。
けれど、こればかりはどうしようもないのだ。
エース自身が気付かないといけない。
そんな中、コンコン、とドアをノックする音が聞こえる。

「親父さん、お客様」
「グララララララ…こんな夜分に誰だ?」

ナースに連れられてやって来たのは、紺色のフードを被った女が二人。

「何でェ、アスカとミクじゃねェか」
「お久しぶりですね。お元気そうで何より」
「お前らがこっちに来るなんてよぃ。何かあったか」

アスカはコクリ、と頷いた。

「ここにシャナメル・オルフェウスが居ると聞いて、参上しました」
「シャナメルに用か」
「あの娘に掛けた呪に関して、伝えていない事がありましてね」
「「「呪???」」」

三人三様の驚きように、アスカ達はクス、と笑った。




◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇




『な、何を………ッ』

驚いた表情で、エースを見つめる。

[そっか、おれは………メルが好きだ]

自覚してしまえば、どうして、欲望が脳裏を過ったのか、バカみたいに独占欲が溢れ出るのか、納得がいった。

「好きだぜ」
『信じない』
「愛してんぜ」
『嘘ばっか。皆、そう云うの。何にも思っていないくせに』
「ったく、煩ェな。煩ェのは塞ぐか」
『何……んぅッ!!』

シャナメルの小さな唇が、エースの唇によって塞がれる。
ちゅ…と小さなリップ音が聞こえたと思えば、角度を変えて重なる唇。

『んんッ、や…ァッ』
「もっと、の間違いだろ?」
『バカッ…んァ…んッ』

もっと感じさせて?
仄かに甘い感覚に酔い痴れたい。
柔らかい感触を堪能したい。
そんな欲望に従う。
最初は余りにも煩いと感じたから塞いだ。
けれど、塞いだ瞬間感じた感覚。
もっと味わいたい。
もっと感じたい。
欲望が、シャナメルへの想いが溢れ出す。

『は………ッ』

長いキスが終わりを告げる時、エースは意地が悪い笑みを浮かべた。

「もしかして、"初めて"か?」
『…バカッ!!知らないッ!!』
「そっか〜、おれが初めてか」

嬉しそうに、"シシシ"と笑う。
シャナメルは顔を真っ赤に染めて、エースを睨むが、エースは何処吹く風か。
シャナメルを抱いたまま、その場に腰を下ろした。

『離して』
「やなこった」
『…………』
「なァ」
『………』
「おれはメルが好きだ」
『さっき聞いた』
「愛してんぜ」
『それも聞いた』
「メルはおれのだ。誰にも渡さねェ」
『ボクは誰のーーーー…え?』

突然的に、シャナメルの身体が光りだす。

「メル!!」
『え……きゃああっ!!』

眩い光に、エースとシャナメルは瞳を閉じた。




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