まぼろばの蒼月
013
潤んだ眼差し、艶めしく光る口唇。
甘過ぎる程の吐息。
仄かに漂う女の色気に、エースの身体が熱く火照る。
「メル……」
『エースくん……』
甘ったるい空気が流れる。
しかし、世の中、そんなに甘くありません。
プルルルルル、プルルルルル。
『電伝虫?』
「無視無視、ンな事より……」
『ダメだよ、エースく……ぁぅ!』
ちゅう、と、首筋にキスを落とす。
ねっとり、と肉厚の舌がシャナメルの首筋を這う。
反応を示すシャナメルに気を良くしたエース。
するする、と、シャナメルのパジャマを脱がせに掛かる。
その間にも、電伝虫は鳴り止まない。
次第に苛立ちが募り始める。
「だーーーーッ!!!」
エースの叫び声に、びくぅ、と、シャナメルの身体が激しく揺れる。
ドカドカ、と、苛立ちを隠さず、大股で電伝虫を置いてある所まで行くと。
「うるっせェな!!!どこの誰だよ!!!」
受話器越しに怒鳴った。
「機嫌悪ィなァ(--;)」
「マルコかよ!!」
「おれで悪かったな。シャナの具合はどうだ?」
はた、と考える。
素直に答えたら、きっと妨害されるに違いない。
[やっと、メルがプロポーズを受けてくれたのに、新婚セイカツを邪魔されてたまるか]
「相変わらずだ」
『!Σ( ̄□ ̄;)』
驚くシャナメルに、エースは口唇に人指し指を当てて、静かにするようにジェスチャーで伝える。
すると、シャナメルは慌てて、口唇を掌で覆う。
そんなシャナメルを見て、エースは、
[さっさと通話を終わらせて、メルを喰う!!!]
そう思った。
その間、0.1秒。
「………そうかよぃ。たまにゃ顔見せろよ。親父が心配してる」
「判った。じゃあな」
半強制的に、通話を終わらせたエースは、再び、大股でベッドに戻る。
「……もう良いぜ」
『……黙ってても良かったの?』
「新婚生活を邪魔するから云わね。続き、続き」
『エースくんってば!!』
「おれはメルとイチャつきてェの」
ぷにょ、と、シャナメルの胸元に顔を埋め、弾力と柔らかさ、そして、温もりを感じている。
こうなったエースは、耳を貸さない。
その事を判っているシャナメルは、小さく溜息を吐いた。
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