まぼろばの蒼月
008
何度も会議を重ね、シャナメルが2番隊隊長補佐役に落ち着いた。
エースは小躍りをしながら喜び、他の隊長達は苦笑いを隠せないでいた。
そして、モビーディック号は、ある島の隠し港に辿り着いた。

「エース、行くのか?」
「あぁ。メルを連れて、隠れ家に居る。何かあったら連絡する」

眠り続けるシャナメルを背負いながら、エースは「へへっ」と笑う。

「気を付けて行けよぃ」
「じゃあな」
「メル、行こうな」

シャナメルを背負いながら、歩き出す。
ゆらゆら、揺れる髪と、足。
それを見送る隊長達。

「本気だったんだな」
「本気?」
「エースだよ」

クルリ、と踵を翻し、歩き出すハルタ。

「アイツ、シャナに関しては"異常"な程の、執着、束縛じゃん」
「確かにな」
「ずっと眠り続けるシャナを"陸"に上げるか、と思ってたんだ、おれ」
「…………」

ハルタの独白を聞いていたビスタ、ラクヨウ、イゾウは黙って聞いていた。
確かに、シュナイダーからも進言は受けていた。
シャナメルを陸に上げ、治療に当たれ、と。
しかし、エースは首を縦に振る事はなかった。
シャナメルの世話を一手に引き受け、甲斐甲斐しく世話をしている姿を見た。

「エースが本気で、シャナとの"結婚"を考えてんだって、判った」
「エースの隙を狙ってた奴等も、これで失恋確定、ってトコかねェ」
「だな」
「だがよ、人妻って言うオプションがプラスされたンだぜ。尚更、増える可能性も無きにしもあらず、だぜ」
「…………」
「エース、頑張れ」
「だな」

所詮は他人事。
隊長達は、エースが歩いていった方を向くしか出来ないでいた。




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