まぼろばの蒼月
006 エースside
ところ変わって会議室。
会議室が、重苦しい空気に包まれる。
ニューゲートの口から漏れる言葉が、エース達の肩に重くのし掛かる。

「セイレーン族純血種の中でも、極稀な力を持つ女を"海神の姫"と呼ぶ、か」
「……それが、シャナって訳か……」
「只の伝説かと思ってたんだが……。実在するとはな」

ナミュールが口を開く。

「伝説?」
「あァ。魚人族ーーー……云わば、海に生息する種族でも有名な話だ」
「その歌声は、海底まで響き、怒り狂いし海王類を鎮め、意のままに操る」
「海軍が"Alive only"で出したのは、その為か」

ここに来て、シャナメルがどうして、手配書に載ったのか。
それは、新聞に載っていた"海底都市アトラティカ"の封印を解かせる為、なのだろう。
けれど、合点がいかない点が幾つかあった。
先ず1つ目。
海王類や海獣と、何度も戦闘を重ねて来た。
けれど、その間、シャナメルの能力は発揮される事はなかった。
何故、急に"海神の姫"の能力に覚醒めたのか?
2つ目。
海軍は何故、今ごろになってシャナメルの存在に気付いたのか。
シャナメルは4つの時に、両親を山賊に殺され、ヒューマンショップに売られた。
それは、本人が云っている事柄だから、間違いはないだろう。
シャナメルは16。
海軍がシャナメルの生まれ故郷である果実の島に向かった、としても、果たして、12、3年前の事を覚えている人物が居るのだろうか。
3つ目。
シャナメル本人が、この能力を知っているのだろうか。
時折、エースを外に引っ張り出して、その腕の中で昼寝をしている。
その時に何時も強請っている"子守唄"がある。
それは、シャナメルがエースに教えた唄である。

「あの唄………」
「あの唄?」

ニューゲートとナミュールの言葉に耳を傾けていた、エースが口を開く。

「メルの昼寝ン時、良く歌ってくれって云われて、歌うんだけどよ……」
「「「エースが歌!!!」」」
「………後で覚えてろ💢」
「止せよぃ(--;)」
「何か思い当たる節でもあるのか?」

小さな笑いが起きる中、マルコとイゾウは、先を促す。

「そン時だけ、"海が静か"なんだよ」
「海が静か?」
「あァ。幾ら晴天でも突然、"表情"を変えるのが"海"だ。それなのに、その"子守唄"を歌ってる時だけが、静かって云うか………」

新世界の海に、常識は通用しない。
コロコロ、と、表情を変えてしまうし、突然、海獣に襲われる時だってある。
それなのに、子守唄を歌い、甲板で昼寝をしている時に限って、海は穏やかなのだ。
今、思えば、子守唄に何か秘密があるのではないだろうか。

「子守唄、ねェ……」
「良く父親が歌ってくれたんだって云ってよ……その時に、色んな唄を習ったって云ってた」
「色んな唄?」
「どんな唄かは知らねェけどよ、中には歌っちゃいけない唄がある、って聞いた。良い唄も悪い唄もあるから、唄は心に響く。だから、悪い唄も知らないといけないって」
「歌っちゃいけない唄……」
「何でも、"起こしてはいけない何か"を起こすんだと。確か、この唄ーーー……悪い唄だけは、母親から習ったって云ってた……と思う」
「エースが云う言葉が真実なら、その唄がアトラティカの封印を解く"カギ"だな」
「ーーーー……そもそも、アトラティカって何だ?古代文明の名残じゃないのか?」

当然の疑問である。
古代文明の名残を残す"海底都市"アトラティカ。
そのアトラティカとセイレーン族と何の関わりがあるのだろうか。




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