まぼろばの蒼月
004
テンタクルス襲撃からまる数日経過した。
襲撃された日は、怪我人の手当てやら、破損状況確認の為に1日〜2日を費やした。
そんな中、ニューゲートから隊長召集の声が掛かる。
けれど、エースは動けなかった。
何故なら、まだ、シャナメルが眠ったままなのだ。
まるで、何かにとり憑かれているかのような、深い深い眠り。

「メル……」

不安げな声が、落ちる。
そっ、と、シャナメルの手を握る。

「起きてくれよ……。メルを嫌いだなんて嘘だ」

どれだけ声を掛けても目覚めない。

「生きてて欲しかったんだ。失いたくなかったんだ」

握ったシャナメルの手を額に当てる。
けれど、目覚める気配はない。

「ーーー…愛してンだよ。メル以外の女なんざ、要らねェよ。メル、起きてくれよ。なァーーー……!!!」
「そう云うコトは、本人が目醒めてからおっしゃいな」
「ーーーー……ダリア」

扉を開けて入って来るのは、ナースのダリア。
ガタガタ、と、椅子を動かして、エースの横に座る。

「エース隊長。ちゃんとゴハン食べなさい。メルちゃんが起きたら、気にしちゃうわ」
「メルが食ってねェのに、おれが食える筈ねェよ」
「……あらあら」

クスクス、と、ダリアは笑う。

「でもーーー……」
「?」
「メルちゃんってば、本気でエース隊長の事、好きなのね」
「へ?」

突然の言葉に、かぁあっ、と、エースの頬が紅く染まる。

「私なら、あんな危機的状況で、エースくんがいない世界で生きたくない、死ぬならエースくんと一緒が良い、なーんて云えないわよ」

誰もが自分の命は惜しい。
当たり前の考え。
ダリアから漏れる言葉に、エースはニヤける口元を掌で覆った。

「看ていてあげるから、会議、行ってらっしゃいな」
「…………」
「側に居たいのは判るわ。でもね、職務放棄はダメよ。逆に、メルちゃん苦しめちゃうわ」
「………」
「目が覚めたら、直ぐに呼ぶから……。さ、行ってらっしゃいな」
「……………」

エースは、黙ったまま立ち上がる。
けれど、その視線は、

「離れたくない」

そう、訴えていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



会議室。
エースを除いた隊長達は、どっかり、と、腰を下ろし、神妙な面持ちでニューゲートを見ていた。
ガチャリ、と、ドアが開き、エースが姿を見せる。
その表情は暗いまま。

「まだ、目醒めねェのかよぃ?」
「……あァ」

ガタリ、と、腰を下ろすものの、視線はドアを見ている。
そんなエースを他所に、

「揃ったか……」

ずっと、無言を貫いていたニューゲートが口を開いた。



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あきゅろす。
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