まぼろばの蒼月
002
「"火達磨"!!!」

大きな火球が、テンタクルスの脚を襲う。
しかし、それは、別のテンタクルスの墨によって、消されてしまう。
海王類とエースの相性の悪さを物語っていた。

「クソッ!!」

襲い来る脚を交わしながら、ギロ、と、苛立った眼差しを向けた。

[メルは、無事に逃げられたか……?]

はぁ、はぁ、と、肩で息を整えながら、シャナメルに想いを馳せる。

[迎えに行けねェかも知れねェ……]

1匹だけなら何とか撃退できた。
けれど、5匹ものテンタクルス。
しかも、水面下には子供のテンタクルス。
生きて戻れる保証は皆無に近かった。

[おれが死んでも、メルは幸せになってくれ]

実の父親がゴールド・ロジャーだ、と、告げても、シャナメルは、

『父親が誰であれ、エースくんはエースくん。ボクは、目の前に居るエースくんが、大好きよ』

頬を赤らめ、見つめる蒼い眼差し。

『エースくーん』

エースを見つけると、新しい創作料理を作ったから味見して、と、云って、幾つかの料理を並べる。
試食をしていると、マルコやサッチに寄って、奪われ、口喧嘩。
シャナメルはその様を苦笑いしながら、柔らかい眼差しで見つめている。

「エース!!!」
「!」

ドン、ドン、ドン、と、銃の発射音。
エースに迫っていたテンタクルスの脚が怯む。

「油断してンじゃねェよ」
「悪りィ」
「シャナの事か?」
「………」
「迎えに行けるさ」
「そうーーー……だな。メルを迎えに行かねェと、な」

ニシシ、と、笑うエースに、イゾウはほっ、とした小さな溜息を落とした。
そんな小さな余裕も、次から次に現れるテンタクルスに寄って、粉々に砕かれる。

「イカの癖に……!!」
「どうやら、テンタクルスの巣に連れて来られたみてェだな」
「マジかよ!!!」

テンタクルスと戦っている間に、別のテンタクルスが船を引っ張って、巣へと連れて来た様だ。
そんな話をしている間にも、テンタクルスは、増えていく。
その内の1匹が気配を消し、エースの背後まで、脚を進める。
脚の先端を鋭く尖らせると、エースに向かって振り降ろす。

「エース!!!」
「!」

幾らエースが自然系の能力者であっても、相手は海王類ーー……云わば海を棲家にする物。
多少のダメージは否めない。
衝撃を覚悟した時、愛しい声が聞こえた。

『お願い!!!もう止めてーーーー!!!』

ピタリ、と、全てのテンタクルスの動きが止まる。
驚いた眼差しを、声がする方へ向ける。
そこには、シャナメルの姿があった。

「メル!!!」
「シャナ!!!」

エース達は驚きを隠せない。
逃げた筈だ。
それなのに、どうしてここに居る?
間に合わなかったのか?
様々な疑問が脳裏を過る。

『お願い!!!これ以上、ボクから大事な人を奪わないで!!!』

キィィィン、と、甲高い音が周囲に響く。
シャナメルの身体を、淡い蒼の光が包んだ。



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あきゅろす。
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