まぼろばの蒼月
001
船外に続く扉に近づく度に聞こえるのは、悲鳴、だった。
余程の死闘を繰り広げて居るのだろう。
ドォン!!!
何かを破壊する音だろうか。
耳に届くのは、破壊音と悲鳴。
その中には、一番会いたいエースの声も混じる。
「固まるな!!狙われっぞ!!!」
「怯えるな!!おれ達ァ、四皇、白ひげ海賊団だ!!海王類ごときに舐められてたまっかよ!!」
怯えの色を見せた船員に、隊長達は激を飛ばす。
「クソ…ッ!!」
目の前で繰り広げられる攻防戦。
何人もの船員が、海に投げ出された。
投げ出された船員は、餌を求めてやって来た鮫、或いは、子供のテンタクルスの格好の餌食となっていた。
「ギャアッ!!」
テンタクルスの太い脚が、固まって居た船員達を薙ぎ倒す。
くるり、と身体に巻き付いた脚が振り上げられ、甲板に叩きつけられる。
グハッ、と、紅蓮の液体が飛び散る。
中には、生きたまま、海に引きずり込まれる船員も居た。
引きずり込まれまいと、必死に柵にしがみつくものの、海王類と人間との力の差は歴然。
力及ぶ事なく、海に引きずり込まれて行く。
「ルーフェン!!」
「隊長ーーー!!!助けて下さ……!!」
悲鳴が木霊する。
モビーディック号の甲板は、地獄の入口と化していた。
テンタクルスに寄って甲板は破壊され、大きく穴があちらこちらに空いている。
テンタクルスの一撃で死んだ者、下半身を押し潰された者、または、頭を砕かれた者達の、遺体だけが残っていた。
「親父……ッ!!」
ニューゲートも、2匹のテンタクルスと死闘を繰り広げて居る。
しかし、歳に勝てる筈もなく。
肩で大きく息を整えている。
「クソッタレが……!!」
ぽつり、と、呟く。
その呟きが、危機的状況を物語っていた。
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