まぼろばの蒼月
003
「16かァ…おれの2個下、ねェ」

シャナメルのカルテ作りが終わったのか、エースはシャナメルを連れて、ニューゲートの部屋に向かっていた。

『な…何か、ごめんなさい……』
「謝んな。メルが悪い訳じゃねェよ」

シャナメルのカルテを作っている間、エースは考えていた。
声が出ない、と云うのは、両親が目の前で惨殺された事が原因、と云う事が判った。
けれど、身体が成長しない、と云う原因が判らない。
もしかしたら、過去に原因があるだろうから、暫くはカウンセリングが必要との診断だった。

[ーーー…おれが治してやるからな]

心の中で呟く。

「おっ、エース」
「サッチ」
『………』

キュ、と、エースの服の裾を握り締める。
どうやら警戒している様だ。
その様を見て、猫の様だ、と思った。
それに伴い、頼ってくれているんだな、とも思う。

[それで良い。メルが頼るのは、おれだけで良い]

そう思った瞬間、「?」と小首を傾げる。

「チビッ子連れて何してンだ?」
『…………』
「え、あァ、コイツはーーーー…メル?」

パッと服の裾を離し、サッチの前に来る。
そして、サッチの服の裾を握り締めると、

「何だ、チビッ子」
『ボクはチビッ子じゃないもんッ!!』
「グォオオオオッ!!」
「!!」

突如、シャナメルの身体が青白く光ったと思った瞬間、バチバチバチ、と、電流がサッチに流れた。

「………すげェ」
『………チビッ子じゃないもん』
「が……ッ」
「てか、メル。お前、能力者だったのか」
『のうりょくしゃ???』

エースの言葉に小首を傾げる。
どうやら判っていないらしい。
パッとサッチから離れると、エースの服の裾を掴む。

「制御出来んのか?」
『判らない。でも加減は出来るみたい』
「制御の特訓しねェとダメだなァ…。まぁ特訓はおれが見るから良いとして」
「お前らァッ!!!!!」
「……何だ、生きてたか」
「生きてるよッ!!」

二人のやり取りに、声が聞こえただろうクルー達が「何事だ」と、それぞれ云いながら近付いて来る。

「エース隊長と…あの黒焦げリーゼントはサッチ隊長か?」
「シャナメルちゃん!!」
「エース隊長、これは一体…」

若干黒焦げのサッチと、エースとシャナメルを交互に見つめるナースに、

「メルの地雷を踏んだンだよ」
「んまぁ。レディに向かって…」

地雷を踏んだ、と云っただけなのに、サッチが何を云ったのか、理解したらしい。

「さぁ、サッチ隊長、手当てしましょうか」
「な、何か無性に怖いんだけど………」

ナース達の異様な眼差しに、シャナメルは『ナースさん達………怖い』と呟いた。

「気にすんな」
『……良いのかな…』
「良いんだよ」

ナースに引き摺られて行くサッチを他所に、エースはスタスタ、と歩き出す。

「ぎゃあああああっ!!痛てェええ!!!」
『ふぎゃっ!!!』

サッチの悲鳴に驚いたシャナメルは、飛び上がる様に、エースにしがみ付く。

「♪」

悲鳴を聞きながら、エースはどこかしら機嫌が良さそうに歩き出す。
どうやら"チビッ子"と呼ばれて、ムカついていたのは、シャナメルだけでは無さそうだ。

「自業自得、自業自得♪」
『………みゅ』

そんな二人を見送ったクルー達は、

「あの娘………何者なんだ………」

と、呟いたのだった。




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