まぼろばの蒼月
002
エースに手を引かれ、部屋に連れ込まれたシャナメルは、ベッドに腰掛ける。
その横に座ったエースを不安げに見つめる。

「手配書に載ってたのは、メルのとーちゃんとかーちゃん?」
『………うん……。でも、もう居ない……居ないの……』

じわり、と、涙が滲む。
それを優しく、エースの指先が拭う。

「メル……」
『ボクも載るの?』
「遅かれ早かれ……何時か、な。けど、メルはおれが護るから、安心しろよ」
『エースくん……』

シャナメルは、まだ不安が宿る眼差しで、エースを見つめる。

「メル?」
『白ひげさんにも、手配書の事、云った方が良いよね……』
「………そりゃァな。ケド、"蒼の魔術師"の事は黙ってろよ」
『………』
「辛ェ想いはしなくて良い。おれだけが知ってれば良いンだからな」

エースは、シャナメルの過去は自分だけが知っていれば良い、と考えているようで。
奇妙な独占欲が、エースの心の内を支配していた。
その事に関して、シャナメルは何も云わなかった。
その様子を見ていたエースは、黙り込んだシャナメルの頭を引き寄せると、ちゅ、と、額に唇を落とす。
その優しさが、ドキン、と胸を高鳴らせる。
けれど、云い知れぬ不安に駆られるのは何故なのだろうか。
エースが笑う度に、"エースを失いたくない"と思うのは、何故なのだろうか。
自分のココロが判らない。

「ーーーー……メル。胸ン中に溜め込むの、止めろよ」
『……え、あ、きゃあっ』

シャナメルを抱き寄せ、そのままベッドに横たわる。
ベッドの上のシャナメルは、まるで、エースを押し倒しているように見えた。

『な……ッ』

かぁあッ、と、真っ赤に染め上げたシャナメルは、わたわた、と手足を動かすが、エースはビクともしない。

「メルが上、って滅多にねェもんな(*´∀`)♪」
『重いから……ッ!』
「軽い軽い(*^^*)」

ガッシリ、と、腰を捕まれて、身動きが取れないシャナメルは、顔を真っ赤に染めて、エースを恨めしげに見つめる。

『エースくんのバカァッ』
「バカで悪かったな(-""-)」

モゾ、と手を動かせば。

『うきゃあっ!ちょっ……擽ったい!』
「こうしたら、どーなる?」
『エースくんッ!あッ!』

指先の動きを変えれば、ピクン、と、シャナメルの身体が跳ね上がる。
そして、腰を使い、シャナメルを突き上げる。

『んッ!』
「感じた?」

ニシシ、と笑うエースを、潤んだ眼差しで睨むが、エースは涼しい顔をしていた。

「メルは、おれンだ。誰にもやらねェよ」

真剣な声音。

『動いちゃ……きゃッ』

くるん、と、器用にシャナメルと体勢を入れ替える。
はぁッ、と、甘い吐息を洩らしたシャナメルは、エースを見つめる。
真剣な眼差しが交差する。
エースの掌が、優しく、シャナメルの頬を撫でる。

「………抱いてい?」
『……ズルい』
「ン?」
『嫌だって云えないの、判ってて……』

フィ、と、視線を反らす。
すると、クス、と、笑った気配がした。






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あきゅろす。
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