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男女テニス部練習試合









「「煉ちゃーん」」


パタパタ走りながら手を振っているのは同じ顔をした2人。
双子の姉妹だ。

テニスコートの中でなにやら話をしている人物――煉――は声のする方を向いて



「あら、遅かったわね、麻衣。瑠衣。」



ふんわりとした笑みを浮かべる。彼女は女子テニス部部長の杠葉 煉(ユズリハ レン)。いわばお嬢様である。
物腰が柔らかく、部長として部をまとめている。
その隣に立っているのが無表情プレイヤーの錦野 風香(ニシキノ フウカ)である。2人は3年で、幼馴染らしい。



賑わうコートでは部員たちが忙しく動き回っている。練習試合形式で練習をするためだ。それも男子テニス部と。



「あれれ?千和君来てないのー?」

「見てない」

「クス、残念ながら見てませんよ」




このあと、男子テニス部のレギュラーが来るのだが。
時間になったら来るだろうなんて杠葉は勝手に思い、話を続けた。

いつものことらしく、さして気にしないのも頷ける。
千和は忙しく、いつもギリギリになってから来る。




「今年の男子テニス部、1年生は強いらしいですよ?」

「ふーん…あ、千和の弟いるんだっけ?」

「はい。いるはずですよ」

「楽しみ…」

「そうね」

「部長ー、“叩きのめしてやる”ーって表情してますよ」

「あら?いけないけない」



陽気な杠葉にため息を零す瑠衣。

ふと、バタバタ走ってくる音が聞こえてそちらに視線を向けた。

案の定、焦って走ってくる子と、引っ張られている子。




「煉、2人が来た。」

「まあ、やっと来たのね?」



風香の言葉にふふふ、と笑みを浮かべながらそちらの方を向く。



「はあ…はぁ、すみませ…!遅れちゃって…あの、その…っ」

「いいじゃーん、試合に間に合えばー。」




引っ張ってきた子――鷲崎凛(ワシザキ リン)はゼハゼハと言いながら杠葉にごめんなさい、と謝っている。
一方、後ろにいる子――牧野里香(マキノ リカ)は頭を掻きながらそっぽを向いている。

この2人は千和と同じ2年で、実力はかなりのものだ。




「里香、お前また屋上で寝てたんでしょー」

「はい。だってこんなに天気いいんだしー…それに、1年もいたんですよ?」

「は?」


「あ、おーーーい!」


「!…来たね。」

「えー!もうですか!?」

「頑張りましょうね、凛」

「は、はい!」



ぞろぞろと歩いてくる男子テニス部。

部長を先頭に歩いてくるのだが、その部長は2年がやっている。




「本日はよろしくお願いします、杠葉先輩」

「こちらこそよろしく頼みますね、錦君」




お互い握手を交わして別々にコートに入って準備運動を始めた。
今年の1年も賑やかな頭をしているのが多い。

部長同士でこのあとの予定を話すのだが、錦は女子テニスに1人足りないのに気づいた。




「あの、幸村は?」

「まだ来てないのよ。多分、生徒会だと思うのだけれど…」

「じゃあ、後の方がいいですかね。アップも必要ですし」

「そうね」



ペラリ、選手一覧を見て煉は微かに目を細めた。

今まで見たことのない名前がそこに乗っているのだ。



「男子テニス部には、もう1年がレギュラーに?」

「はい。ご不満ですか?」

「いえ、楽しみですわ」



おずおずと尋ねる錦に対し、微笑む杠葉。その表情を確認してホッと胸を撫で下ろした。

その手には男子テニス部のレギュラーの名前。

そこには



1年 幸村精市
   柳連二
  真田弦一郎



3人の1年の名前がのせられていた。









「柳」

「どうかしたのか?」

「ううん。ただ、楽しそうだな・って思ってね」

「女子テニス部…全国を現在5連続制覇。その実力は底知れず、横に並ぶ学校はない。実に興味深いだろう」

「俺達も、負けられないね」


「そうだな。…、精市。今、お前が一番知りたいことを当ててやろうか?」

「ふふ、こわいなー」

「お前の姉、幸村千和がこの女子テニス部にいるかどうかだろう?」

「うん。まあ、ね」

「安心しろ。所属している。しかもレギュラーとしてな」



ふ、と柳は不敵な笑みを見せた





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091105

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