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海と氷






「月日とは…早いものだな」



ぼそり呟く千和は、ため息を零した。

生徒会室にいる2人が千和を見る。




「どうした千和ー。ジジくせぇこと言いやがって――あだっ!!」




ギャハハ!と笑うのは生徒会副会長、天音拓海(アマネ タクミ)。

陽気な性格をしていて、千和より先輩である3年。柔軟性があり、千和とはまた別に支持が高い。

青がかった黒髪と、右耳に2つ、左耳に1つピアスがついている。

からかう様な笑い方に潤が拓海の頭をチョップした。




「何かありましたか?」

「いや、何でもない。」

「そうですか。…、先ほど学校に連絡が入ったのですが、氷帝の生徒会長がご挨拶に伺うと。」

「あー…そうだろうな。」



ペンをクルクル回して物思いにふける。



「お昼すぎに来るそうですよ」

「……いや、あと2,30分で来るだろ。拓海、お前の家の菓子を早急に頼む」

「りょーかい、ボス!」

「潤はー…」

「茶道部貸切の許可…ですね?」

「ああ。」

「分かりました」




2人は生徒会室を去り、しーん、と静まり返った。

溜息を零し、千和は立ち上がって生徒会室を後にする。

ゆっくりとした足取りで校門へ足を向けた。


上履きからローファーに履き替えて。

体育をしているクラスと自分の歩く足音しか聞こえてこない。




丁度校門について数分。警備の人に事情を説明し終えた丁度のことだ。

黒い車が学校前に止まった。

そこから降りてきたのは自分とさほど変わらない身の丈。

目が合うと、ニヤリ、笑みを浮かべた。



「ようこそ、立海へ。案内する」

「ああ」



こちらへ。

自分と並びながら歩く氷帝の生徒会長。

その間は沈黙していた。

授業中というのもあり、特に騒ぐことはない。

通されたのは、茶道部が部活で使用している茶道室。

入口には潤が立っていた。




「許可はいただきましたよ」

「ああ、サンキュ」




戸を開けて、中に通されると一式用意されていた。

準備も潤がしてくれたのだろう。



「ここで待っていてくれ。すぐに着替えてくる」

「ああ」




手短な返事をして、座って待っていた。

すぐ隣の部屋が更衣室となっていて、慣れた手つきで着物に素早く着替える。

鏡で見て確認してから、更衣室を出て行って。

足を折りたたみ、正座する。



「お待たせした」

「……サマになっているな」

「まあ、な」




ふ、と笑って茶をたてはじめた。

2人とも無言で、礼儀、作法を知っているためか、緊迫した雰囲気が流れる。

コト、器が置かれ、一通りの流れが終わるとお茶菓子を持って入ってきた拓海。

そして続いて入ってくる潤。2人は端に正座した。




「――さて、本題に入りましょうか。」

「そうだな。」

「まず、氷帝学園の生徒会長に晴れてなれた、というわけだな。景吾」

「当たり前だろ」

「そして、入学と同時にテニス部部長…まあ、予想はしてたが」

「弱いヤツの下につくつもりはねぇ。テメェもそうだろ、アーン?」

「まあな。」

「お前が俺様にお願いしてきた日はビビったな。」

「もう、1年経ったんだな。オレがお前の敷地のマンションを借りて。」




いつも苦労をかけてしまって申し訳ない。



眉尻下げて景吾に言う。

気にしていない、そんな表情を向けて。




「お前の頼みだ、受けるしかねーだろ」

「しかし、条件も条件だったな」

「これくらいいいだろ?アーン?」




跡部の条件。
それは、自分と逢うときは茶を点ててほしいということ。

テニスと同じように昔からやっていた茶道。
跡部に評判がいいだけではなく、誰にでも人気があった。




「ボスー」

「!…ああ、わかってるよ拓海。」

「立海と氷帝の親睦を深める…その話だったな。」

「ああ」

「各学校の―――・・・」



その後、約2時間にわたって2人の真剣な話し合いが始まった。







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091103

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