立海の入学式
念願…ではないけれど。
俺は立海に入学した。
まあ、首席で入学した姉さん程頭良くないし、普通に入学式に並ぶ形になるわけだけど。
あれ以来、姉さんには会ってない。
だから、同じ立海に入ったわけだから、会うかなーとか、期待を胸にして。
入学式では長い長い校長の話が終わり、やっとか…なんて思ってしまう。
この後は確か…生徒会長の話…だっけ?
『校長先生、ありがとうございました。続きまして、生徒会長よりー…』
ざわり、周りが騒ぎだした。
ああ、噂の生徒会長なんだっけ?
男女人気があるらしいけど…
『それでは幸村生徒会長、お願いします』
は?
顔をバッとあげた。
ざわついていた生徒は黙りこみ、背筋をしゃん、と伸ばして壇上を見ていた。
多くの新入生がみる中、壇上に上がってくる生徒。
男子制服を身に纏っていて、最後に会った日の、あの髪型に比べて少し伸びたかもしれない。
そして、男らしさが目立つ。
『新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。』
…姉さんっ
1年前より凛々しくなっていた。
『カタい話はしない。…ようこそ、立海へ。歓迎する。
オレはまだ2年だが、こうやって生徒会長をやっている。ここは実力主義だ。自分の力を出し、この3年間を充実してほしい。以上だ』
壇上から消えていく姉さん。
その後も入学式は続けられたが、俺はそんなことよりも姉さんのことが気がかりで仕方ない。
心臓がバクバクする。この高鳴りを必死に抑えて残りを耐えていた。
入学式が終わった後、すぐに俺は行動した。
クラスに戻るとか、そんなの関係ない。
周りを見渡して、見つけた何人かの集団。その中に姉さんが居たのが見えて、俺は誰と話していようが関係なく真っ直ぐ歩いていった。
一番に気づいたのは、男の人。
首を傾げて俺を見てくる。
「?…どうしたー1年。クラスに戻って担任から説明を受けるんだろ?」
「あの…幸村、先輩に用が…」
もうファンができた?なんて言うヤツがいるけど、無視して姉さんを見た。
俺に背を向けて立っている姉さんは、ゆっくりとこっちを向いて、俺を見るなり目を丸くした。
「精市…。」
「え?知り合いなんか?」
「ああ、オレの弟だ。…精市、クラスに戻れ。SHRが終わったら生徒会室に来い。そこにいるから、な?」
「う、ん…」
「あ、場所がわかんねーか。担任に言って案内してもらえ。」
ぽんぽん、俺の頭を撫でると俺の背を押した。
「また後でな」
ヒラヒラ、手を振って。
俺は複雑な気分で教室へ戻って行った。
真田と同じクラスで、知り合いが同じ教室にいるのは助かる。
担任に一言謝って席に着いた。
SHRも簡単に終わって、校舎内の地図を渡された。
この後は自由時間らしく、帰ってもいいし校内を把握してから帰ってもいいらしい。
俺は地図を片手に席から立った。
「幸村」
「……何?真田」
「あの生徒会長、千和さんではないのか?」
「ああ、姉さんだったよ。このあと会うんだけど、真田も行くかい?」
「そうだな、行かせてもらおう。」
帰る支度をして、俺と真田は教師の元へ行った。
ただ、姉に会うだけなのに。
なんでこんなに緊張するんだ…。
でも、
この高揚感が
まさか、打ち砕かれるなんて…
思ってもいなかった。
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090930
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