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始まる生活





昨日、マサに俺と一緒に住もうと言った。驚いていたが…まあ、仕方ないか。
小さな声で「おじゃまします」と言いながら門をくぐり、マサの部屋まで直行。
当たり前だが、マサの家にはだれもいなかったようで電気も付いていない。



「千和」

「ん?…ああ、荷物はこれと…どれだ?」

「これでええんよ」



軽いな。
本当にこれだけでいいのか?
なんて聞いてしまった。
というのも、衣類と財布、携帯、その他もろもろ。
マサの部屋は質素で片づけられすぎている、といってもいいだろう。

少し大きめのバッグを俺とマサ、1個ずつ持ってその他テニスのものをいくつか。
小さく笑った仁王に笑みを向けて手を取って歩き出す。


「じゃあ行くか」



心残りなんてものはないらしい。
靴を履いて、そそくさと家を出ていく。

待機させておいたタクシーに乗り込んで俺の家へと向かった。
途中、誰かに見られていたなんて、知らずに。





「ついたぞ」

「んー……ふあ、眠…」


目を擦っているマサが可愛い。なんて思いながら、足を進める。


「じゃあついたら寝ていて良いぞ?」

「ん…」



ゆっくりと歩いているマサの腕をひいて家に向かい、玄関を開けたらパタパタと俺は寝室へ足を向けた。
荷物はとりあえずここでいいか。なんて思いながら後ろを振り向くが、誰もいない。
マサがなかなか来ないことに疑問を抱いて玄関を覗くと、靴を脱がずに佇んでいる。

まだ、迷っているのか。



「マサ、今から此処がお前の家だ…遠慮するな」

「………ん」


それでも躊躇っていて、入るまで時間はかかったものの、ゆっくりと入ってくるマサは俺の前まで漸く歩いて来て。




「おかえり、マサ」


「!…た…ただいま」



顔を真っ赤にして嬉しそうにほほ笑んだ。
空き部屋に荷物を置いて、そこをマサの部屋だと教えてやると、目を丸くしていた。

2人で暮らすとはいえ、やはりプライベートは欲しいだろう。
荷物を出入り口に置くと、後ろからトン、と押される感覚に陥り振り向けば、仁王が抱き着いてきたのが分かった。
ゆるゆると回された腕は腹部で交差してしっかりと服をつかんでいる。


「あ、りがと…」
「どういたしまして」


こうして。2人の暮らしは始まった


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120202

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あきゅろす。
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