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夢に居る君は

〜幸村視点〜


仁王にあの事を言われてから俺なりに考えた。
姉さんが姉さんでなくなる理由。わからないな、考えても。

俺は姉さんが大好きだし、嫌われるようなことは一度もしてない、はず。
それに…


「関東大会、優勝だってな」


目の前にいる姉さんはにこやかに…しかも、こうやって俺に会って笑って頭を撫でてくれる。
もう俺は子供じゃないのに。


「おめでとう」


――おめでとう


…重なる。
重なってしまう。


「錦が言っていた。お前は強い・と。」

「部長が、ね…」


彼に褒められても嬉しくないんだよ、姉さん。


帰ってきて。

帰ってきてよ。


また、一緒に暮らそうよ。



喉につまって、なかなか言えない。きっと、仁王のあの言葉が絡み付いているからだと思う。



「千和ー」

「?マサ、どうかしたのか?」



仁王に声を掛けられて、直ぐにそっちに行ってしまった。

撫でられるのが好きな訳じゃない。でも、姉さんに撫でられる心地よさだけは覚えてる。


「お昼、一緒に食べよう言うたんはそっちナリ」

「ああ、そうだったな。すまんすまん」

「ホントにそう思っとるんか?」

「思ってる思ってる。それじゃあ弁当取りにいかないとな。生徒会室に置きっぱなしだ」


クスクス笑いながら歩き出す姉さん。その足取りは遅い、と思う。
仁王は姉さんの背を押して早く取りにいかせようとするが、パタリ、足が止まって考える素振りを見せると


「やっぱいい。俺がそっちいく」

「生徒会室で食べるのか?別に構わないが、俺の他に2人いるぞ?」

「構わんよ」



仁王は俺に背を向けているから、どんな表情をしているのかわからない。
でも、うれしそうな声で話しているのがわかる。


だって、俺と話すときとぜんぜん違うからね。



「早く行かんと昼休みおわるぜよ」

「わかったわかった」



再び姉さんは背を押されて、俺から離れていく。

俺はただ呆然とその風景を見ているだけ。



ふと、確認するかのように仁王がチラ見してきた。



「       」




口パクで言った言葉。


俺は何も言わず、手を握り締めるしかなかった。




――説得するな――




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あきゅろす。
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