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同居の真相



仁王視点





いつの間にか寝てしまったらしい。

ソファーに寝転がって、千和が頭を撫でてくれたところまで覚えているんじゃけど…。

それにこの布団…、いつ掛けてくれたんかの。全然気付かんかった。
家じゃ僅かな音にも反応して起きてたし、こんなに熟睡するのはどのくらいぶりじゃろうか…。

スン、
良い匂いがして、体を起こす。
千和が何かつくってるんじゃな。

フローリングに足を下ろして千和のところまで歩いて行った。
そしたら、鼻歌歌いながら手際よく作っている姿。
それは、学校で見るような千和じゃなくて、女って思わせる。



「…千和……」

「ん?あ、起きたのか?ちょうどよかった、お腹すいてないか?」

「………すいた」


じゃあ食べよっか。
って器に盛り付けてる。

俺も手伝って、テーブルに運んでいった。
俺の分もある…。
箸も準備してさっきみたいに並んで座った。


「マサ、食べられなさそうだったら無理しなくていいんだからな?」


また言葉づかいが男にもどっちょる。
そう思いながらも言葉にしないでおく。

千和が手を合わせて「いただきます」っていうから、俺も真似てそれをした。
家でも一人だし、やったこともなかった。

淡々と作って、よそって、食べる。
空になったら片づけて、それでおしまい。

だから、すごく新鮮。



「い、イタダキマス」

「ん、どうぞ召し上がれ」



折角千和が俺のも作ってくれたわけだし、出来れば食べたい。
自分の身体に拒否はやめて。と思いながら口に運んだ。


「………っ」

「吐きそう?いいんだぞ、無理すんな?」

「ち、がう…」



口を手で覆い、ポロリ、涙を流してしまった。
自然と流れてしまった涙。

千和は食べられなくて、吐きそうだと思ったらしい。
焦る千和の手を握って、微笑んだ。



「千和の料理、食べられるから。」

「でも…」

「千和の料理…おいしい」

「…本当か?」

「ウソは言わん。」


正直、ここまで食事をおいしく感じたのは初めてかもしれない。

食が細くなってしまってから、そこまで多く食べられなくなった。
けど、千和の料理は本当においしくて、満腹になるまで端を止めなかった。

食器を洗い場に持って行って、水につけておく。
テーブルを拭いている千和は俺にコーヒーを温めて飲もう、と言って。

レンジに余ったコーヒーを温めてテーブルの上にのせた。


もう夜の9時。
夜の番組を見ながらコーヒーを飲んでいた時に、千和は思い出したかのような声を上げて俺を呼んだ。
首を傾げながら千和を見て。


「考えたんだがな、マサ。お前がいいって言うんなら…此処に住まないか?」

「……はあ!?」

「どうせ俺はこの家で一人暮らしだし、遠慮はいらない」

「いやいやいや、そうでなくて」

「?」

「千和は女で俺は男じゃし!」

「プ…っ、アハハハ!!そんな事気にしていたのか?」


なんで笑う要素が?
間違ってない、俺は間違っていない。もう中学生じゃし…なあ。やばいじゃろ。


「平気だ、いたいけなお前を襲うほど馬鹿じゃないさ」


え、千和が俺を襲う?逆じゃろ、普通。
…でも、嬉しいナリ。千和がここまで考えてくれると。



「で、どうするんだ?」

「迷惑じゃないなら」

「もちろん」


明日、荷物を取りに行くことになった。
千和は何故か嬉しそうじゃし、何も言わんでおこう。



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