尾行は、向いてない。
「精市?」
練習試合も終わって、部活も終了となった。
最近のお決まりのメンバーである、俺と柳、真田の3人で帰る。
ずうっと呆けていた俺はいつの間にかという感じで、校門へ足を向けていた。
「どうかしたのか?幸村…」
「…いや、なんでもない」
柳は一つ間を置いて「そうか…」と口にし、真田は気まずそうに口を閉ざしていた。
真田は、多分わかっているんだろうね、俺がこうなっている理由が。
「そう言えば、仁王があれほど話す奴とは思っていなかったな」
「うむ」
「……そうだね」
今まで何度も仁王は部活でも見ている。
目立つ髪の色をしている生徒は少なくない。
テニス部にも実際多いしね…。
仁王は生徒の中でも珍しい髪の色だから目立つ。なかなか部活に顔を出さないし、さぼりがち。
口数も少なくて、なんだか謎が多いやつだ、なんて思っていた。
けれど……
「いつ、知りあったんだろうね」
「さあな。」
「ん?2人は結構仲よさそうだったから不思議とは思っていたが…精市は知らないのか?よく仁王は精市を見ているようだが…」
「俺が知りあいならとっくに話しているだろ?俺と仁王は挨拶くらいしかしないさ」
元より、仁王の方からいつも見てきて何やら笑みを浮かべて去っていく。そんな感じだからな。
練習をしていても、確かに仁王の視線は気になっていたけどね。
挨拶しても返事とか「はよ」とか、そっけないものだけ。
「……噂をすればなんとやら、だな」
呆れる様な表情で柳が口にした言葉。
視線の先には仁王が帰っているようだった。
「おかしいな…仁王の帰り道は反対のはずなんだが…」
不思議と言った声色で言う柳に視線だけ追う。
特に気にすることなんてない。そう思いながらも身体はすでに動いていた。
真田の呼びとめる声を無視して仁王の後を着いて行った。
なんか、ストーカーしているみたいだ…。
仁王の家は逆だと言った…。柳の言うことだ、間違いないだろう。
家に向かわず、何処に行くんだろう…。
時折止まって空を見上げて…再び歩きだした。
右に曲がり左に曲がり。
ふらふら歩いている仁王にいらだちを感じ始めた。
どこへ向かっているんだ、ってね。
ふと、まがった先を俺はその後に続いてまがった。
けれど、仁王の姿がなくて焦った。
(どこに…!)
自然と足は速まり、駆ける。
一本道だけど、細い道はある。どこかに入って行ったかもしれないし、家に着いたのかもしれない。
仁王の家なんてどうでもいいのに、なんでこんなに焦るのか自分でもよくわからなかった。
「何の用じゃ」
後ろから聞こえた、声。
振り返ってみれば両手をポケットに突っ込んだ仁王の姿があった。
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091227
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